心不全とは何か?

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方は、心不全の患者を治療・施術する機会はあるであろうか。

もちろん、いわゆる心臓リハビリテーションというかかわりではなく、心不全のリスク管理をした上で、鍼・灸やマッサージを施術した経験はあるかという意味である。

その心不全について、どの程度の知識をお持ちであろうか。

心不全患者は、日本の高齢化率とともに年々増加しており、2030年までに約130万人になると推計されている。

これは、心不全患者が急増するということで、『心不全パンデミック』といわれている。

このことについては、かなり以前から日本循環器学会や日本心不全学会が警鐘を鳴らしている。

そのため心不全を、“医療者向けの定義”と、“一般者向けの定義”を分けて定義づけしている。

医療者向けの定義:「なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」

一般者向けの定義:「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」

特に一般向けの定義で重要なのは、“息切れやむくみが起こる”=低心拍出から呼吸困難と体うっ血が生じる、“だんだん悪くなる”=進行性である、“生命を縮める病気“=生命予後は不良な病気、ということを明記していることである。

さらに敢えて、医療者向けだけでなく、一般者向けの定義を定めた意味合いとしては、心不全の治療において、医療従事者のみが治療を行うのではなく、心不全患者自身やその家族、あるいは心不全患者と関わるすべての方々が疾患の理解や予防、およびリスク因子などを知っておいてほしいからである。

つまり、心不全患者を含めその周囲のサポートなくして、心不全治療・予防は困難ということの裏返しである。

したがって、地域在住の心不全患者の急性増悪の予防や入院率・死亡率を下げるといった二次予防のかかわりには、地域で勤務していることの多い鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方の手助けが必要不可欠なのである。

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

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