ヒアルロン酸について

肩関節疾患の臨床にて患者より「肩関節への注射は効果があるの?」と質問をされることは多くないだろうか?

また、肩関節への注射後に肩関節の疼痛が軽減し、可動域が改善する症例がいることも事実である。

そこで、肩関節の注射でよく行われるヒアルロン酸の注射について考えてみたい。

ーヒアルロン酸ー
タンパク質と結合して動物結合組織中の基質の重要な構成成分をなし,特に関節液・眼球ガラス体・皮膚・臍帯さいたいに多くみられる。

特に、組織の保護および構造の維持,摩擦を和らげ,細菌の侵入を防ぐなどの機能を果たす役割は関節にとって重要と言える。

最近では、ヒアルロン酸含有サプリメントも多く発売されており、関節痛を有する高齢者から人気である。

ただし、ヒアルロン酸含有サプリメントの経口摂取がどの程度、関節の機能改善に寄与するかについて一定の見解には至っていない。

一方でヒアルロン酸含有の注射液の効果にはエビデンスがある。

日医工株式会社が販売しているヒアルロン酸ナトリウム関節注25mgの関節注射の対象は次のようなものである1

○変形性膝関節症、肩関節周囲炎

○関節リウマチにおける膝関節痛(下記(1)~(4)の基準を全て満たす場合に限る)

1)抗リウマチ薬等による治療で全身の病勢がコントロールできていても膝関節痛のある場合

2)全身の炎症症状がCRP値として10mg/dL以下の場合

3)膝関節の症状が軽症から中等症の場合

4)膝関節のLarsen X線分類がGradeⅠからGradeⅢの場合

このように肩関節周囲炎はヒアルロン酸ナトリウムの注射の対象疾患である。

ヒアルロン酸は関節軟骨の保護に寄与し、その結果、痛みや炎症の抑制に効果があると言われている。

関節内に損傷・炎症が生じると関節液が過剰に分泌され、それにより関節内のヒアルロン酸濃度が低下する(図1)。

これにより関節の滑動性が低下するため、可動域等の低下が生じると考えられている。

そのため、ヒアルロン酸は炎症性の関節疾患に有効と考えられている。

ただし、ヒアルロン酸は最終的には代謝され、体外に排出されるので、ヒアルロン酸の効果は一時的なものである。

ヒアルロン酸は一時的な効果ではあるものの、肩関節拘縮の改善に有効とされている2

したがって、ヒアルロン酸により可動域を向上させ、さらにその後の関節可動域練習や筋力トレーニングを行うことで可動域がさらに改善する可能性もある。

また、ヒアルロン酸は抗炎症作用・関節包の癒着予防・損傷部位の治癒促進なども期待されることから、急性期の肩関節周囲炎にも有効と考えらえる3

・参考文献
1)ヒアルロン酸ナトリウム関節注25㎎「日医工」https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00063009.pdf

2)千葉富紀子ら:肩関節拘縮患者の可動域改善に関節注射は有効か.仙台市立病院医誌p65-67.2018
3)後藤昌史:肩関節周囲炎の治療.2021.生化学工業株式会社

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師向けセミナー

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