下肢動脈疾患について

末梢動脈疾患(Peripheral arterial disease:PAD)、下肢動脈疾患(Lower extremity arterial disease:LEAD)、閉塞性動脈硬化症(ASO)、これらの用語について、すべてほぼ同義語で用いている場合があるかと思われる。

PADは、動脈硬化性疾患のうち大動脈疾患と冠動脈疾患を除くすべての動脈疾患を包含した概念である(図)。

したがって、下肢に起こる動脈疾患を指す場合には、PADは正確とはいえない。

近年では、下肢に起こる動脈疾患を表す場合は、LEADを用いるようになっている。

また、従来から用いられている下肢ASOは、LEADと同義語である。

LEADは、加齢や喫煙、高血圧、脂質異常症、脳血管疾患の合併、慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)等が発症リスクとされる。

また、糖尿病も発症リスクであり、糖尿病患者の1015%と高頻度に合併するとされる。

HbA1c1%増加するごとに、LEAD発症のリスクは26%増加するともいわれている。

予防的な側面からみると、後述するLEADの評価を糖尿病患者全例に実施する方が良いであろう。

さらに、LAEDに感染が加わると下肢切断リスクが極めて高くなり、このような状態のことを包括的高度慢性下肢虚血Chronic limb-threatening ischemiaCLTI)という。

下肢動脈の血行再建術や足部潰瘍の治療が必要となる。

したがって、CLTIに陥らないようLEADを評価、発見し予防することが重要である。

臨床的にLEADを評価する方法としては、ABIankle brachial pressure index、足関節上腕血圧比)、下肢の末梢動脈の触知、Fontaine分類等がある。

この中でも特にセラピストが押さえておきたいのは、後脛骨動脈や足背動脈の触知である。

これらは、どちらか一方でも触知できなければ陽性とされる。

しかし、『触知できない』以外にも動脈の拍動が弱化している場合も多い。そのような症例においては、LEADのリスクがあるものと判断し、介入をすると良いであろう。

投稿者
井上拓也


・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

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