ウオーキングの有用性

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方と、『ウォーキング』について考えてみたい。

ウォーキングは一人でも行え、経済的にもお金がかからずに可能であるため、大変気軽に取り組める運動であることは言うまでもないであろう。

また、健康のために「11万歩歩きましょう」というフレーズはお聞きになったことはあると思われる。

この“健康のため”というのは何を指しているであろうか。

下肢筋力向上のことであろうか、または全身持久力向上のことであろうか、

あるいは精神的健康度(メンタルヘルス)のことであろうか。

また、11万歩という歩数の設定は妥当であるだろうか。

以下の『歩行』は、あくまで通常歩行(時速34km)という前提で進めていく。

まずは、下肢筋力から考えてみると、歩行における筋出力はせいぜい最大筋力の20~30%であるといわれている。

したがって、いくら歩行を行っても恐らく筋力が向上することはないと思われる。

せいぜい筋力維持に留まると考えられる。

しかし高齢者においては、下肢筋力の筋力維持も大変重要なことではある。

次に、全身持久力からみてみると、歩行というのは運動強度から考えると『低強度』の運動と考えられる。

運動生理学的に持久力を向上させるためには、中等度の運動強度にて運動することが推奨される。

したがって、持久力の面から考えても向上するとは考えにくく、維持する程度であると考えられる。

高齢者にて、低体力者であれば通常歩行においても、中等度の運動強度にある可能性は十分ある。

メンタルヘルスの面からみてみると、自ら進んでウォーキングを継続して行っている方であれば、苦痛は伴っていないと思われる。

したがって、行動変容ステージは高いレベルと考えられ、精神的な健康度は向上する、もしくは既に高いので継続できていると考えられる。

しかし、この面をより向上したければ、一人ではなく仲間とともに継続することが良いであろう。

11万歩という歩数については、体力(筋力や持久力)は維持できるが、向上はさせないであろうという報告がある。

以上をまとめると、1日1万歩の普通の速度のウォーキングは、メンタルヘルスは向上させる可能性が高い。

しかし、体力(筋力・持久力)は維持する程度であると考えるのが妥当であると思われる。

したがって、体力の低下を『予防』するという意味においては非常に良い運動であると考えられる。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方も患者に説明する際に、ウォーキングは安易に体力が向上すると言わず、筋力や持久力が低下するのを予防するために行うのが良いと伝えられた方がいいと考えられる。

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

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