令和4年度診療報酬改定にて、重症化予防への取組の推進として『透析中の運動指導に係る評価の新設』が発表された。
その内容は、「人工腎臓を算定している患者に対して、透析中に当該患者の病状及び療養環境等を踏まえた療養上必要な訓練等を行った場合の評価を新設する」とされる。
対象患者は、人工腎臓を実施している患者であり、透析時運動指導等加算として75点が算定可能である(指導開始から90日を限度とする)。
算定要件としては、「透析患者の運動指導に係る研修を受講した医師、理学療法士、作業療法士又は医師に具体的指示を受けた当該研修を受講した看護師が1回の血液透析中に、連続して20分以上患者の病状及び療養環境等を踏まえ療養上必要な指導等を実施した場合に算定できる」こととなっている。
透析患者の運動指導に係る研修というのは、日本腎臓リハビリテーション学会主催の『腎臓リハビリテーションガイドライン講習会』のことであり、2022年7月に第1回目の講習会が開催された。
徐々にではあるが、透析中の運動療法を含む腎臓リハビリテーションへの期待や関心が高まりつつあり、今後は益々盛り上がっていくと思われる。
このように至った背景には、腎臓リハビリテーションにおける運動療法は腎保護作用があることが証明され、これにより運動耐容能向上、ADLおよびQOLの改善が期待できるようになったからである。
また、腎臓リハビリテーションガイドラインにおいても、そのような効果が認められることから、透析患者における運動療法を『推奨する』としている。
実際、臨床にて透析患者に対する運動療法については、以下の点に注意して実施していく必要がある。
透析中の介入時間については、透析前か透析開始か開始30分後から透析前半の時間帯で行い、透析終了直後や透析後半は避ける。透析後半から終了にかけては、不整脈や血圧低下のリスクがあるためである。
運動強度については、全例に心肺運動負荷試験(CPX)を実施し、ATレベルで行うことが望ましい。しかし、CPXが実施不可能な場合は、自覚的運動強度(Borg指数)11~13(楽である~ややきつい)とするか、簡便的には安静時心拍数+20~30/分とする方法がある。
筆者も透析中の運動療法に関わるようになりまだまだ経験不足は否めないが、読者の皆様とともにこの分野を盛り上げていけると幸いである。
投稿者
井上拓也
・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
・サルコペニア・フレイル指導士
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。