ストレッチングを考える その2 ストレッチングのポイント

本投稿では、『ストレッチングのポイント』と題して、筆者が常日頃ストレッチングを実施する際に、特に気を付けていることについて述べさせていただくことにする。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師も参考にしていただければ幸いである。

まずは、一般的にスタティック(静的)ストレッチングをする際に、その効果に影響する因子を整理しておく。

ストレッチングの効果に影響するのは、ストレッチングの強度・時間・セット数・期間などである。

強度については、筋からの抵抗を感じられる程度で保持し、オーバーストレッチングで筋損傷を引き起こさないようにすることが重要である。

もう少し平たく言えば、「対象者が痛みなく我慢できる最大角度で保持すること」となる。

時間については、30秒~2分程度保持することで筋の伸張性が改善されるといわれている。セット数については、合計2分以上となるように3~4セット繰り返す。

期間については、3~6週間の継続したストレッチングにより、伸張性の向上に効果的であるとされている。

しかし、これら強度や時間・セット数・期間はいずれもエビデンスが確立しておらず、統一した見解が得られていないのが現状である。

次に筆者自身がストレッチングを実施する際に、常に気を付けていることを3つ示す。

・その筋の起始と停止を引き離すようにする

・起始あるいは停止の一方は固定し、もう一方を伸張する

・可能な限りその筋(単一筋)を個別化して伸張する

3点ともに共通していることは、骨格筋の解剖学や運動学を考えながらストレッチングを実施するということに他ならない。

つまり、骨格筋の起始・停止、走行、作用をイメージしてストレッチングを実施することで、筋の伸張がより効果的になるのである。

ストレッチングは、骨格筋が付着している骨を介して、関節運動を実施することで伸張できる。

すなわち、骨格筋の走行や作用と反対方向に関節を動かすことで、効果的なストレッチングとなる。

その際、一方の骨は固定しもう一方の骨を動かすようにする。固定が不十分であると、十分なストレッチングの効果が得られないのは周知の通りであろう。

また同名筋であっても、二頭筋や三頭筋、四頭筋のように筋頭が複数であれば、その起始が異なるため、わずかに走行もしくは作用も異なる。

また、単関節筋と多関節筋が混合していることもある。

そのため、ストレッチングをする際には、先述した通り関節運動を作用と“反対”の方向にすること、単関節筋であれば一関節を、二関節筋であれば二関節を運動させるといった工夫が必要となる。

このように解剖学や運動学を考慮しながらストレッチングを実施することで、筋の伸張がより効果的に、そして、よりその筋を個別的に伸張することが可能となるのである。

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

 

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