利用者のマネジメント

リハビリの利用者をマネジメントする上では、「利用者の行動変容を狙ったアプローチ」が重要となります。

リハビリの目的は、利用者における自立を支援することです。

したがって、「セラピストの個別リハビリのみをリハビリの利用目的にしている」「マッサージをしたもらうことがリハビリだと思っている」「目標がないまま、リハビリを利用している」などは、リハビリの利用者にとって望ましくない状況です。

これらの状況が、生じる原因の一つに、利用者が自身の自立に関して興味や関心がないことが挙げられます。

よって、利用者が自らの意志で自身の活動・参加レベルを上げていくための行動が生じるように利用者の行動変容を支援するためのマネジメントが重要となります。

行動変容のモデルとして有名なものに、Prochaskaらの「トランスセオリティカルモデル」があります。

このモデルは、人が行動を変える場合は、「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えます。

行動変容のステージをひとつでも先に進むには、その人が今どのステージにいるかを把握し、それぞれのステージに合わせた働きかけが必要になります。

【1】無関心期
→6ヵ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がない

【2】熟考(関心)期
→6ヵ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある

【3】準備期
→1ヵ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある

【4】実行期
→行動変容を起こしているが、その継続が6ヵ月未満

【5】維持期
→行動変容の継続が6ヵ月異常

●トランスセオリィティカルモデル

行動変容のマネジメント

・無関心期/熟考期
この時期は、自立に関する興味・関心が乏しいため、利用者の「自立に関する考え方」にアプローチする必要があります。この時期の利用者は、自立に対して否定的な言葉が多く、自分の考えを主張する傾向があります。
リハビリのスタッフが提案する自立支援に対して、否定的な考えを持っており、ご自身の信念、考え方を持っている利用者は、自立に向けた取り組みを真剣に考えることができません。
したがって、相手の自立を促したいばかりに、こちらの提案を押しつける形になってしまうと、利用者からの拒否が強くなります。この時期では、利用者が自分の現状を整理できるように、質問を投げかけ、このままではまずいと理解してもらうことが大切です。

また、自立に向けた生活を獲得するために、急激な行動変容を求めるのではなく、少しずつ、行動を変化させていくことの選択肢を提案することが大切です。
例えば、調理動作
の自立を考える場合は、調理全体を行うのではなく、お皿の用意や簡単な盛り付けだけを行うことから始めることが、調理動作の自立のきっかけになるかもしれません。

・準備期
この時期は「1ヶ月以内に行動を変えようと思っている時期」です。
自立に向けた良い方法があればすぐに始めたいと思っているが、どのようにして行えばよいかわからない、取り組みへの自信がなくスタートができないという状態です。
したがって、利用者のモチベーションを本格的な実行へと導いていくことが重要となります。
この時期においては、適切な目標設定と行動計画を立てることが重要となります。
目標や行動計画により、具体的な行動変容の中身が決定します。目標設定と行動計画の立案においては、理学療法士、作業療法士からの自立に向けた効果的な目標設定と行動計画への適切な助言が必要となります。

・実行期/維持期
この時期は、「自立に向けた行動を実際に開始している時期」となります。
よって、利用者の「自立に関する行動」に対して、積極的にアプローチをする必要があります。この時期の利用者は自立に向けた行動に対する効果が気になり、今後の行動の継続に不安を感じている時期です。よって、この時期は小さな変化を、肯定的に捉えてもらうように支援します。
それによって、自己効力感を高めもらう必要があります。自己効力感とは、「自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できるかという可能性の認知」となります。いわゆる、「自信」と言っても言いでしょう。「自信」を高めてもらうためには、自立に向けた行動の効果や意味を積極的に通所リハビリのスタッフや関係者よりフィードバックを行う必要があります。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

 

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