筋萎縮のメカニズム

筋力(主動作筋)低下の要因は、神経学的要因と形態学的要因(筋萎縮)に分けることができる。

以前のブログで、神経学的要因についてはその詳細なメカニズムを投稿した。

しかし形態学的要因(筋萎縮)について十分な説明ができなかったので、本投稿では筋萎縮についての詳細を述べていく。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方もご存知であるように、古くから「生体の最大筋力は生理学的筋断面積に比例する」と言われており、最大筋力と筋容積には強い相関関係があることが知られている。

骨格筋の筋容積は、それを構成する『筋構成タンパク』の代謝によって決定づけられている。

つまり、筋構成タンパクの合成(同化)と分解(異化)のバランスによって成り立っているのである。

したがって、筋肥大も筋萎縮もしない場合には、筋構成タンパクの合成と分解のバランスが保持されているということになる。

これが、筋構成タンパクの合成が分解を上回ると筋肥大が生じ、逆に筋構成タンパクの分解が合成を上回ると筋萎縮が生じるのである(表)。

不活動により、廃用症候群に陥った場合の骨格筋は、始めのうち(23日程度)は筋構成タンパクの合成が低下していくことで、相対的に『合成<分解』となり骨格筋が萎縮していく。

しかし、それ以降になると筋構成タンパク合成の低下はプラトーになる。

その一方で、筋構成タンパクの分解が亢進することより『合成<分解』のバランスとなり、筋萎縮が進んでいくのである。

このような不活動による筋萎縮の特徴としては、速筋線維(TypeⅡ線維・白筋線維)よりも遅筋線維(TypeⅠ線維・赤筋線維)に生じるとされている。

この理由として、遅筋線維はヒラメ筋や大殿筋、脊柱起立筋といった姿勢を保持する骨格筋に筋線維組成比率が高い特徴がある。

つまり、不活動により座位や立位、歩行といった抗重力位の活動低下によって、遅筋線維が有意に筋萎縮していくことになるのである。

また筋萎縮の特徴としては、『筋細胞の縮小』と『筋線維数の減少(アポトーシス)』に分けられ、これらによって筋容積が減少し、結果的に筋力低下が起こるのである。

以上、筋萎縮のメカニズムについて詳細に説明をさせていただいた。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方が診ている高齢患者においても、筋萎縮がみられ筋力低下を起こしている方々は非常に多いと思われる。

そのような患者に対し、筋萎縮がそれ以上悪化し筋力低下を起こさないように治療介入していただけることを願うばかりである。

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

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