サルコペニアの原因

サルコペニアは骨格筋量の減少だけでなく、筋力低下や身体機能低下をも含めた概念である。

では、サルコペニアはいかようにして生じるのであろうか。

サルコペニアの原因は5つあることが知られている。
すなわち、①加齢、②低活動、③低栄養、④骨格筋に悪影響を及ぼす疾患、⑤医原性である。

加齢は一次性サルコペニアに分類され、その他の原因は二次性サルコペニアに分類される。

加齢によって、成長ホルモン(GH)やインスリン様成長因子1(IGF-1)、テストステロンやアンドロゲンといった性ホルモン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の血中濃度が低下する。

これらのホルモンは、筋タンパク合成に関わるホルモンであるため、加齢とともに低下することでサルコペニアを生じさせる。その他、筋衛星(サテライト)細胞の低下やミトコンドリア機能の低下、ミオスタチンの増加、運動ニューロンや運動単位の減少なども影響を及ぼす。

低活動では、筋タンパクの合成と分解に不均衡が起こり、合成よりも分解の方が上回るため、骨格筋量が減少する。当然、筋力低下も起こり、特に抗重力筋の廃用が進行することで、サルコペニアを生じる。

低栄養によって、エネルギー供給およびタンパク質が不足すると、タンパク・エネルギー欠乏状態となる。

必要エネルギー量を確保するために、肝臓に貯蔵しているグリコーゲンや筋タンパクを分解する(糖新生)。したがって、エネルギー欠乏状態が続くと、筋タンパクの分解が促進されることになる。

疾患は、神経筋疾患や急性炎症、侵襲、悪液質(カヘキシア)などによって起こるサルコペニアである。

神経筋疾患は、筋ジストロフィーや皮膚筋炎・多発性筋炎、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症などが含まれる。炎症や侵襲では、炎症性サイトカインやタンパク異化ホルモンの分泌が亢進するため、筋タンパクの消耗が起こることが知られている。

医原性は、医療行為や薬剤有害事象によって起こるサルコペニアのことである。

医療関連については、不適切な絶食や禁食、不適切な安静度(離床制限や抑制帯など)、不適切な栄養管理などが含まれる。薬物関連については、副作用としてミオパチーを合併する薬剤の内服はもちろんであるが、近年ではポリファーマシーによってもサルコペニアが生じる可能性が示唆されている。

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・循環認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導士
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

 

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