危険な腹痛を見逃すな...!!

皆様は、普段の臨床の中で対象者の方に「お腹が痛い」と言われたとき、どのような対応をとるだろうか。

腹痛は日常的にもよくみられる症状であり、「便秘かな?」「お腹を下しているのかな?」とは思いつつ、いざ評価するとなると何をどのように評価すればいいのだろうかと悩まないだろうか。

腹痛は病院や診療所の外来受診で風邪・下痢・頭痛についで多い。

しかし腹痛といっても様子を見ていれば良くなる腹痛から生命に危険及ぼす腹痛まで、原因は様々である。

訪問や介護現場でも腹痛の訴えを聞くことは少なくないと推測する。

そこで今回は、緊急性を伴う腹痛を見極めるために、セラピストが知っておくべき評価方法と対応についてまとめていく。

❶危険な腹痛を見逃さないために重要なこと

危険な腹痛を見逃さないためにセラピストが知っておくべきことの一つが

SAMPLEとOPQRSTを使いこなせることである。

腹痛は腹部に自覚される疼痛を意味する・

消化器系をはじめ、泌尿器、生殖器などの腹部内臓器はもちろんだが、それ以外にも心血管や胸部、全身性疾患などの原因でも腹痛は生じてくる。

これらの多くの原因がある中で対象者の変化に気づけるのはその場に居合わせたセラピストである。

そのため我々は医師の代わりとなって観察を行い、対象者の状況を正確に医師または看護師に伝えなければいけない。

その際に重要になってくるのが、SAMPLEOPQRSTを使いこなすことである。

❷ SAMPLEとOPQRSTを使いこなす

危険な腹痛においては今まで経験したことのない激しい痛みバイタルサイン全身状態の崩れといった腹痛+αがみられた場合である。

これらは緊急性が高い場合である。

特に緊急性の高い疾患は以下の通りである。


・腹部大動脈瘤
・大動脈解離
・腸管虚血
・肝がん破裂
・重症急性胆管炎
・異所性妊娠
・腸閉塞
・急性膵炎
・急性心筋梗塞
・肺動脈塞栓症

(参考文献:急性腹症診療ガイドライン出版委員会編集:急性腹症診療ガイドライン 医学書院2015)

例えば、急激に起こる痛みは血管や腸管の閉塞や破裂の可能性を示唆し緊急度が上がる。

また、随伴症状の冷汗や嘔吐は自律神経症状であり緊急度が高いと疑うべき症状である。

この様な疾患には直ちに処置が必要な可能性があり、激しい腹痛やバイタルサインが不安定な場合は丁寧に問診している時間がない。

緊急な対応が必要あるため時間をかけず医師へ連絡する必要がある。

この時に最小限かつ有用な情報を得るためにSAMPLEが提唱されている。

SAMPLEとは?

S=sign 症状
A=allergy アレルギーの有無
M=medication 投薬中の薬剤の情報
P=past medical history 既往歴
L=last meal 最後にいつ飲食をしたか
E=event 何が起きたのか

これらを医師に伝えることで、現場にいない医師に緊急時に最低限必要な情報を報告することができる。

ただ腹痛はそれだけではないのが厄介なところである。

重症疾患でも初期にはバイタルサインは変わらず、数時間後や翌日になってバイタルサインが崩れ全身状態が悪くなることがある。

緊急性が高くない場合でも腹痛を伴う対象者のアセスメントにあたっては、全身状態を観察しながら、発症時期や様式、疼痛の種類や部位、発症状況、さらには随伴症状を問診することが重要となる。

これらを聴取するのに適したものがこのOPQRSTである。

痛みの情報収集で大事なこととしては、緊急度の高い疾患の可能性がある上の図での(  )の中に入っている危険なキーワードを聞き逃さないということがとても重要となる。

今回は危険な腹痛を見逃さないための評価方法としてSAMPLEとOPQRSTについて述べた。

セラピストは腹痛の診断をするためにアセスメントを行うのではなく、腹部の症状が出現した際に医師の代わりとなって観察を行い、対象者と主治医または看護師との橋渡し的存在として、緊急性などの状況をアセスメントに基づいて医師または看護師に伝える必要がある。

投稿者
堀田一希

・理学療法士

理学療法士免許取得後、関西の整形外科リハビリテーションクリニックへ勤務し、その後介護分野でのリハビリテーションに興味を持ち、宮﨑県のデイサービスに転職する。
「介護施設をアミューズメントパークにする」というビジョンを掲げている介護施設にて、日々、効果あるリハビリテーションをいかに楽しく、利用者が能動的に行っていただけるかを考えながら臨床を行っている。
また、転倒予防に関しても興味があり、私自身臨床において身体機能だけでなく、認知機能、精神機能についてもアプローチを行う必要が大いにあると考えている。そのために他職種との連携を図りながら転倒のリスクを限りなく減らせるよう日々臨床に取り組んでいる。

 

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