肩関節周囲炎の好発部位である腱板疎部について

肩関節周囲炎や肩関節外傷が生じた場合、疼痛の原因となる好発部位に腱板疎部がある。

腱板疎部とは烏口上腕靱帯や上関節上腕靱帯などから構成される空間で腱板が被覆していないのが特徴である(図1)。

腱板疎部には肩関節の前方関節包や関節上腕靭帯が存在している。

投球動作などの肩関節の急激な外旋動作や、加齢に伴う前方関節包や関節上腕靭帯の組織の脆弱化により、微小な損傷を受けやすいとされている。

医師の診断では次のような場合に腱板疎部と診断されることが多い。

・肩関節の安静時痛および運動時痛がある。
・肩関節外旋・内旋可動域制限がある。
・烏口突起外側の腱板疎部に圧痛がある。
・画像診断にて腱板損傷が否定されている。

腱板疎部は損傷度が大きい場合は、前方関節包が弛緩し関節の不安定性が生じる。

また、不安定性により関節包に微細な損傷が反復されると炎症と瘢痕化が進み、関節拘縮に移行すると言われている。

腱板疎部損傷が生じた場合は、患部の安静を第一優先し、炎症症状の改善を狙い、安静時疼痛、夜間痛、痺れなどの痛みが低下し、炎症が落ち着けば積極的に運動療法を行う。

ただし、腱板疎部損傷の不安定型では肩関節の下方、前方の不安定性や脱臼感を訴える症例もいるため、このような場合は強い負荷の関節可動域練習は行うことは避けた方が良いと考える。

一方で、拘縮型の場合は、伸張痛に応じて伸張負荷を漸増的に高めていくことが重要である。

腱板疎部の関節包の線維化は肩関節拘縮の主たる原因になると報告されている¹)

臨床では第一肢位での外旋可動域制限が多いが、烏口上腕靭帯と腱板疎部の癒着が大きく影響していると考えられる。

参考文献
1)橋本 卓・他:腱板疎部領域の病態組織所見と肩の病態との関連.肩関節 29: 491–495, 2005

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

 

 

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