透析患者のドライウェイト

透析患者におけるドライウェイト(dry weight:DW)の設定は、極めて重要である。

腎臓は、生体内において尿を生成する過程で水分量を調整し、恒常性(ホメオスタシス)を維持する臓器である。

したがって、末期腎不全に陥ると尿生成から排泄が困難となり、水分の出納バランスが崩れ、過剰に水分が溜まることになる。このように、過剰に体液が貯留している状態を『溢水』という。

溢水の状態では、浮腫や肺うっ血・肺水腫、高血圧などといった症状がみられるようになる。

そこで重要となってくるのが、ドライウェイトの概念である。

ドライウェイトとは、「体液量が適正であり透析中の過度の血圧低下を生ずることなく、かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」と定義される。

すなわち、透析中あるいは透析後に過度な血圧低下が起こらず、かつ顔面や四肢などに浮腫もみられない適正な体重(目標体重)であり、安全に透析を終了することのできる体重ともいえる。

このドライウェイトの設定は、
①透析中の著明な血圧低下がない
②高血圧がない
③浮腫がない
④胸部レントゲンにて肺うっ血がない
⑤心胸郭比(cardiothoracic ratio:CTR)が50%以下(女性では53%以下)
を指標としている。

しかし、これら指標においてもコントロールが困難な場合には、その他の指標として
⑥心房性ナトリウム利尿ペプチド(human atrial natriuretic peptide:hANP)
⑦心エコーでの心嚢液の有無や下大静脈径
⑧循環血液量計を用いた血管内容量の変化
⑨生体電気インピーダンス(BIA)法による浮腫率
などを用い、総合的に評価する。

以上のように、透析患者において適正な体重管理は、ADLQOL、生命予後に繋がる重要な問題である。

したがって、体重増加が著しい患者に対しては、その原因を考えるとともに、セラピストの立場からも患者教育を通して、体重管理や水分・塩分摂取ができるように指導する必要がる。

投稿者
井上拓也


・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

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