ウォームアップとクールダウン

運動療法を開始あるいは終了する際の、ウォームアップとクールダウンの重要性についてまとめてみたい。

筆者は、主に心臓リハビリテーションに従事していることから、このような知識は臨床上、リスク管理をする意味において非常に重要であると考えている。

【ウォームアップ】
・身体を安静から運動へ移行させる準備段階であり、骨格筋を収縮・弛緩させたり、血液循環を促し、安静時から代謝レベルを有酸素運動時の代謝レベルに近づける。 

骨格筋や腱などの柔軟性を高めること、肺循環における換気血流のマッチング(換気血流不均等(V/Qミスマッチ)の減少)、冠循環調節、動脈血管拡張(後負荷軽減)、運動筋での酸素取り込み能の改善などが目的となる。

【クールダウン】
・急激に運動を中止するのではなく(特に中等度~高強度の運動後)、徐々に安静時の心拍数、血圧に戻すようにする。

運動時の下肢筋は血管が拡張しており、運動後も血管拡張が持続すると、血液が下肢に貯留され静脈還流量が低下する。

このため血圧低下が起こり、これに加え副交感神経(迷走神経)の過度な亢進が生じると心拍数も低下し、低血圧やめまい、ふらつき、気分不良、失神、嘔気などを起こすことがある。

クールダウンでは急激な静脈還流の減少を防ぎ、また、運動中に活性化した交感神経緊張を緩徐に低下させ、急激な副交感神経(迷走神経)の活性化を予防することにより、上記した現象を予防することができる。

さらに、乳酸をできるだけ早く排出させることでカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)による悪影響も取り除く効果があるとされる。

このようにウォームアップとクールダウンは、筋骨格系や自律神経系、呼吸・循環応答、代謝系などに様々な効果がある。そのため、運動療法の前後でぜひ意識し、実践いただければ幸いである。

 

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・循環認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導士
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

 

 

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