
洞頻脈(sinus tachycardia)(図)は、洞結節が歩調とり(ペースメーカー)となっている洞調律が、交感神経の亢進や自動能の亢進によってHR>100bpmになった状態である。
ちなみに、臨床では洞頻脈のことを「サイナスタキ」と略して言うことが多い。
運動によってみられる洞頻脈は、運動による骨格筋の酸素需要が増加することに対しての生体の生理的な反応であるため異常とは捉えない。
一方で、何らかの原因があり洞頻脈を起こす場合は、その原因を精査しそれを治療・是正することが必要である。
洞頻脈の原因は様々であり(表)、脱水や発熱、低酸素(SpO2低下)、貧血といった原因から、疾患に関連する原因として、狭心症や急性心筋梗塞、心不全、ショック、肺血栓塞栓症、COPD、甲状腺機能亢進などがある。
また薬剤性の原因として、シロスタゾールやβ刺激薬の服用などが知られている。さらに、日常生活や趣味嗜好に関連する原因としては、カフェインやアルコール、ニコチンの過剰摂取などが挙げられる。
洞頻脈の症状は、特に何もないこともあれば、動悸を感じることもある。
洞頻脈の対応は、基本的には症状がなければ経過観察で良しとされる。しかし、動悸をひどく感じる場合や上記した洞頻脈の原因がいずれかである場合は、その原因を検索し原因が同定できれば、その原因の治療を行うようにする。
最後に余談ではあるが、一昔前にみられた『洞性頻脈』や『心室性期外収縮』といった表現は、略すのが主流となっている。
すなわち、洞性頻脈→『洞頻脈』、心室性期外収縮→『心室期外収縮』と表現されるようになっている。
投稿者
井上拓也
・理学療法士
・循環認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導士
・サルコペニア・フレイル指導士
・心電図検定1級
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。