糖尿病足病変とは...?

糖尿病足病変とは、「神経障害や末梢動脈疾患と関連して、糖尿病患者の下肢に生じる感染、潰瘍、足組織の破壊性病変」と定義されている1)

糖尿病足病変は、糖尿病神経障害による感覚鈍麻(感覚神経障害)、足の変形(運動神経障害)、皮膚の乾燥・角化(自律神経障害)と、末梢動脈疾患による血流低下(下肢動脈疾患、lower extremity artery disease:LEAD)に外的要因が加わることで発症する。

また、糖尿病足病変は感染を伴うと重症化(潰瘍、壊疽)し、下肢切断につながることでさらに生命予後が不良となる。

糖尿病神経障害による感覚神経障害によって、足部の感覚(知覚)低下が生じる。

温痛覚や触圧覚の低下により、自身で足部の異常(疼痛、外傷、熱傷、胼胝など)やその変化に気づくことが困難となる。

そのため、異常の発見が遅れることで、外傷や熱傷、胼胝形成、爪・皮膚病変を惹き起こし、あるいはそれらの増悪を惹起し潰瘍の原因になる。

また、運動神経障害によって下肢の末梢優位に筋萎縮や筋力低下、内在筋や足趾の低筋緊張などが生じる。

そのため、足部の内在筋の筋萎縮から足部や足趾の変形(クロウトゥ(claw toe、鷲爪趾)、ハンマートゥ(hammer toe、槌趾)、外反母趾、凹足変形、シャルコー足変形など)を来しやすくなる。

これら変形は、足圧中心(center of pressureCOP)の変化を招き、足底の同部位に圧迫や剪断などの力学的ストレスがかかり、足底圧異常をきたす原因となる。

自律神経障害では、発汗量の減少が皮膚の乾燥や亀裂を生じさせ、皮膚の防御能が低下すことで感染を起こしやすくなる。

また、末梢動静脈シャント血流が増大することで、末梢毛細血管の血流が低下する。

末梢動脈疾患は、末梢血流障害を惹き起こし足潰瘍の原因となる。

また、潰瘍の治癒機転(感染防御、肉芽形成)を妨げる要因ともなり、創傷治癒が遷延化する。

糖尿病足病変の予防については、『糖尿病診療ガイドライン 2024』において、糖尿病患者の足病変の発症および重症化予防のための集学的フットケアが推奨されている1)

すべての糖尿病患者およびその家族に対して、早期よりフットケアに関する教育を行い、よりリスクが高い患者に対しては個別指導を行う。

具体的には、定期的な足の観察(診察)、足に適合した履物の指導や作製、非潰瘍性皮膚病変(胼胝、鶏眼、白癬症、爪病変など)の治療、禁煙、血糖コントロールが必要である。

 ◉参考文献

  • 糖尿病診療ガイドライン2024

 https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

 

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・循環認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導士
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

 

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