運動負荷心電図について

運動負荷心電図検査は慢性冠動脈疾患において、虚血性心疾患の診療に用いられている。

その臨床上の目的は、冠動脈狭窄の評価・診断(狭心症の有無)心筋梗塞後の心筋虚血の評価冠動脈疾患の重症度の評価予後予測の評価冠動脈血行再建術の適応の評価治療効果の判定冠攣縮の誘発などである。

このうち最も重要なものは、冠動脈狭窄の評価・診断することにある。

診断基準は、狭心症ではJ点から0.060.08秒後で測定し、0.1 mV1mm)以上の水平型(Horizontal型)ないし下行傾斜型(Down-sloping型)のST下降である(図)。

もし、安静時からST下降がある場合は、付加的な0.2 mV2mm)以上の下降で評価する。

冠動脈狭窄は、1本の冠動脈狭窄よりも23本など複数の冠動脈狭窄(多枝病変という)が存在する場合において、特にST下降が高率に出現する。

しかし、運動負荷心電図検査はその診断精度が、感度・特異度ともに70%前後とされており、診断精度が十分に高いとはいえないところが問題視されている。

したがって、検査対象者には検査をする前に、検査前確率を検討する必要がある。検査結果における偽陽性や偽陰性は、この検査前確率によって左右されることも多い。

検査前確率は、検査対象者の性別・年齢・胸部症状・冠危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙など)の有無である。

例えば、高齢男性で典型的な胸部症状(狭心痛)があり、さらに冠危険因子を複数有している場合、負荷心電図が陽性(ST下降)であれば、冠動脈狭窄である可能性が極めて高くなる。仮に陰性(ST変化なし)であっても、偽陰性の可能性が残ることになる。

一方、若年者で典型的な胸部症状がなく、冠危険因子も有していない場合、負荷心電図が陽性(ST下降)であっても、偽陽性(正常冠動脈)が含まれていることも多い。

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・循環認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導士
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

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