
筋皮神経障害は、肩関節や上腕の機能に影響を及ぼす神経障害のひとつであり、特にスポーツや外傷による肩関節周囲炎に伴って発生することが多い。
筋皮神経は腕神経叢の外側神経束から分岐し、主に上腕二頭筋、上腕筋、烏口腕筋の運動を支配するとともに、前腕外側の感覚も担っている。この神経が障害を受けると、肩関節の運動制限や筋力低下、感覚異常などが生じる(図1)。
●原因
筋皮神経障害の主な原因には、以下のようなものが挙げられる。
- スポーツによる外傷:ラグビーや柔道など、肩への強い衝撃が加わる競技では神経の牽引や圧迫が起こりやすい。
- 手術による影響:肩関節の手術や骨折後の固定によって神経が損傷を受けることがある。
- 圧迫や伸長ストレス:長時間の圧迫や無理なストレッチによって神経が伸長され、障害が発生する場合がある。
●症状
筋皮神経障害による症状は、神経の損傷程度や発生部位によって異なるが、一般的には以下の症状がみられる。
- 上腕の筋力低下(特に肘を曲げる動作が困難になる)
- 肩関節の前方挙上制限
- 前腕外側の感覚異常(しびれや鈍感)
- 烏口腕筋の萎縮
圧迫によって筋皮神経の障害が生じている場合、リハビリテーションにおける筋リリースやストレッチングなどの徒手療法、ならびに温熱療法が効果的である。
●筋皮神経が圧迫を受けやすい部位
筋皮神経が圧迫を受けやすい部位は、主に以下の3か所である。
- 烏口腕筋部(図2)
筋皮神経は腕神経叢の外側神経束から分岐し、烏口腕筋を貫通する。
この部位での圧迫は最も一般的で、以下のような状況で発生しやすい。
- スポーツ動作(特に投球動作やウェイトトレーニング)
- 肩の手術後における癒着
- 烏口腕筋の過緊張や肥大
- 肩関節周囲炎後の癒着
- 上腕筋部
筋皮神経は烏口腕筋を通過した後、上腕筋と上腕二頭筋の間を走行する。この部位での圧迫は、以下の原因により発生することがある。
- 上腕筋や上腕二頭筋の肥大・過緊張
- リュックサックやギプスなどによる長時間の圧迫
- 過度なストレッチによる神経伸展ストレス
- 肘関節
筋皮神経は上腕部を走行した後、肘近傍で皮枝(外側前腕皮神経)を分岐する。
この部位で圧迫が生じると、前腕外側の感覚異常が顕著になる。
- 外傷や骨折(上腕骨遠位部や橈骨近位部の骨折)
- 長時間の肘屈曲姿勢(就寝時の姿勢やデスクワーク)
急性期に激しい疼痛や安静時の痛みが軽減してきた段階では、烏口腕筋や上腕筋の緊張を緩和・伸展することで、筋皮神経の圧迫が改善される可能性がある。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。