腰部脊柱管狭窄症の術後後遺症

腰部脊柱管狭窄症の手術後に、下肢のしびれや筋力低下が残存する症例がいる。

そのような患者は、「手術をしたのによくならなかった」「手術は失敗したのではないか?」と不満を漏らす人が多い。

しかし、腰部脊柱管狭窄症の手術後に現れる後遺症は、珍しいものではない。

手術前に長期間にわたって神経症状がある場合、圧迫された神経の損傷が回復しない可能性が高い(図1)。

長期間圧迫を受けた神経は阻血により組織が壊死するため、回復が困難である。

よって、手術前の罹患期間が長くなれば、術後の神経症状の後遺症は残りやすいと言える。

また、腰部脊柱管狭窄症による末梢神経損傷では様々な症状が出現する。

神経の束には有髄線維や無髄線維,運動神経,感覚神経などの様々な線維がある。

よって、どの神経が損傷されるかは断定することは困難である。

痛み、しびれ,運動麻痺,感覚障害に加え、疼痛による筋緊張亢進なども生じやすい。

腰部脊柱管狭窄症は第4~5腰椎に障害を受けることが多い。

そのため、第4腰神経根以下の神経根の支配領域に疼痛や筋力低下が生じることが多い(図2)。

疼痛やしびれが生じると、活動量が低下するため全身の筋力が低下するという悪循環に陥る。

腰部脊柱管狭窄症の術後のリハビリテーションでは、残存する疼痛やしびれがあったとしても自制内の範囲で歩行や筋力トレーニングを実施することが望ましい。

腰部脊柱管狭窄症では下腿以下の末梢の感覚障害が出やすいことから、歩行や立位でのふらつきが生じやすい。

そのため、狭い支持基底面での立位保持や閉眼での運動課題などを行い、ふらつきの軽減に向けた介入も必要となる。

また、足部周囲筋や下腿三頭筋が萎縮をすると、筋紡錘などが正常に作用しにくいためより感覚障害が助長されやすくなる。

そのため、下肢の筋力トレーニングは継続的に実施するほうが望ましいと考える。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

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