
廃用性筋萎縮はギプス固定や疼痛による関節の不動化、長期臥床により、筋原線維の萎縮、筋組織の脂肪変性、筋肉の脱力性の増加などの生理学的変化が生じることである。
廃用性筋萎縮はタイプⅠ(遅筋線維)が優位に減少すると言われている。
タイプⅠ線維は姿勢保持筋に多いため、廃用性筋萎縮が生じると立位、歩行などでアライメント異常や持久力低下を示すことが多い。
また、骨格筋毛細血管の増減は,筋活動量に依存し,不活動により筋活動量が減少すると骨格筋毛細血管の退行性変化が生じると報告されている1)。
毛細血管は血管に酸素・栄養を骨格筋に供給していることから、毛細血管の退行性変化は様々な機能障害を生じさせる(図1)。
骨格筋の酸素供給が低下すると、有酸素性代謝より無酸素性代謝が優位になり、血中乳酸濃度が高まる。
そのため、筋内のアシドーシスが亢進し、その結果、筋の弛緩が得にくくなることや筋疲労を感じやすくなる。
さらに、毛細血管の退行性変化はタンパク質などの栄養分の運搬能が低下させるため、筋内のタンパク質や糖質が不足し、エネルギー不足やタンパク合成能力が低下し、筋の萎縮がさらに助長される。
また、毛細血管の退行性変化による末梢循環の低下により,静脈血栓症を生じやすくなる。
廃用性筋萎縮は感覚機能の低下を生じさせることもわかっている。
筋萎縮により筋紡錘・腱紡錘の異常発火により,四肢の相対的な位置関係や抵抗感覚,重量感覚などが侵され,運動能力の低下を招くとされている2)。
このように廃用性筋萎縮は、筋肉に起因する機能障害を惹起し、ADL・QOL低下が生じる。
そのため、リハビリテーションに関わる関係者は常に廃用性筋萎縮の評価を行う必要がある。
評価としては次のようなものがある。
- 筋周径計測
- 体組成測定
- 体重測定
- 筋力測定
- エコーやMRIなどの画像診断
介護系施設や在宅の現場では体組成測定や画像診断などは難しいが、筋周径計測や体重測定は簡便に行える。
・参考文献
1)Fujino H, Kohzuki H, Takeda I, Kiyooka T,Miyasaka T, Mohri S, Shimizu J, Kajiya F:Regression of capillary network in atrophied soleus muscle induced by hindlimb unweighting.J Appl Physiol 98: 1407-1413, 2005
2)武田功:ラットヒラメ筋の廃用性萎縮における筋紡錘・腱紡錘の機能的変化. 総合リハビリテーション 25巻8号 (1997年8月発行)
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。