
本稿は、モニター心電図における電極の貼付位置の特徴について解説させていただく。
モニター心電図は読者の皆さんもご存知のように、12誘導心電図と比較し電極の数が少なく簡易的に不整脈を評価・検出することができる。
また、入院中の病棟であれば必要に応じて、入浴時以外はモニター心電図で管理したり、心臓リハビリであればリハビリ時間中はモニター心電図を付けながら実施するのが一般的である。
したがって、12誘導心電図よりも体動による筋収縮によって筋電図波形が混入したり、皮膚と電極の接触によって基線が揺れたりするノイズやアーチファクトが入りやすい。
こうしたノイズやアーチファクトは、心電図波形が非常に見にくくなるとともに、誤った不整脈の評価をしてしまうこともある。
有名なところでは、歯磨き中に起こるとされる波形で心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)様に見えるものがあり、『歯磨きVT』と言われている。
また、ノイズやアーチファクト以外にもP波が非常に見にくい場合も多々ある。
さらにモニター心電図は、基本的には心筋虚血の評価には向かないが、患者が胸痛などを訴え症候性である場合、12誘導心電図が可及的速やかに実施できないときは、モニター心電図によってある程度評価を行わないといけないこともある(ただし、12誘導心電図の準備ができれば、12誘導心電図を速やかに記録することを優先する)。
このようにモニター心電図管理中に様々な場面があるが、そういった場面に応じて電極の貼付位置を変更し、最適な誘導方法で評価できるようすることは重要である。
以下、電極の貼付位置によっての特徴を記す。図とともに正確な貼付位置を確認していただければと思う。
- NASA誘導:筋電図の混入や基線の動揺が少なく、不整脈のモニタリングに良い。
P波がみやすい、12誘導心電図のV1誘導に似た波形。
- V5変法誘導:P波がみやすい、脚ブロックがみやすい。
12誘導心電図のV1誘導に似た波形。
- CM5誘導:ST変化のモニタリングに優れ、虚血性変化がみやすい。
P波がみやすい、基線の動揺が少ない。
12誘導心電図のⅡ誘導またはV5誘導に似た波形。
- CC5誘導:ST変化のモニタリングに優れ、虚血性変化がみやすい。
体位の影響が少ない、12誘導心電図のV5誘導に似た波形。
- 双極V5誘導:前壁心筋梗塞のST変化がみやすい。
12誘導心電図のV3誘導に似た波形。
- 双極aVF誘導:下壁心筋梗塞のST変化がみやすい。
12誘導心電図のaVFまたはⅢ誘導に似た波形。
それぞれの特徴に応じた電極の貼付位置を知っておくことは、より良いモニター心電図における心電図波形の評価になると考える。
投稿者
井上拓也
・理学療法士
・循環認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導士
・サルコペニア・フレイル指導士
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。