肩関節の滑液包炎の評価と介入

肩関節周囲炎の主たる原因の一つとして滑液包炎がある。

特に、肩峰下滑液包炎と三角筋下滑液包炎が問題となることが多い(図1)。 

一般的に滑液包は機械ストレスが増加することにより損傷し、その結果、滑液包が腫脹することにより、疼痛が生じる。

肩峰下における肩峰と上腕骨の衝突による肩峰下滑液包炎、三角筋の過用による三角筋下滑液包炎が起こりやすい。

ただし、滑液包炎は機械ストレスのみで生じるわけではないことに注意が必要である。

 

痛風・偽痛風・関節リウマチ・感染症・リウマチ性多発筋痛症でも肩峰下滑液包炎や三角筋下滑液包炎は生じる。

よって、安静時痛が強い、肩関節以外の関節痛がある、微熱が続いている、倦怠感があるなどの症状が併発している場合は、機械ストレス以外の内科系疾患を疑う必要がある。

滑液包の内壁は滑膜で覆われており、血管,神経,リンパ管が存在している。

また、痛覚受容器である自由神経終末もあるため、疼痛への感受性は高い。

よって、炎症が起こると疼痛誘発しやすく、日常生活に支障が出ることが多い。

●肩峰下滑液包炎/三角筋下滑液包炎の診断

肩峰下や三角筋中部線維を中心とした安静時痛や動作時痛の訴えがあると肩峰下滑液包炎や三角筋下滑液包炎が疑われる。

肩関節屈曲・外転の自動運動や抵抗運動にて同部位に疼痛が出現することが多い。

MRI・関節エコーにて肩峰下滑液包や三角筋下滑液包の腫脹を認めれば、確定診断となる。

臨床における留意点は、肩峰下滑液包炎/三角筋下滑液包炎が機械ストレスによるものなのか、その他の内科系疾患等ものが原因であるかの判断である。

その為、全身症状の確認、血液検査も重要な情報となる。

機械ストレスが原因の場合であれば、Neerのインピンジメントテスト、ホーキンステストなどを実施し、陽性であれば肩甲上腕関節の可動域や肩甲上腕リズムを評価する必要がある。

●肩峰下滑液包炎/三角筋下滑液包炎の治療

原因が、機械ストレスであれ、内科系疾患であれ、安静時の疼痛が強い急性炎症の状況では、安静による患部へのストレスの軽減及び、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用する。

痛風や関節リウマチなどある場合は、そちらの治療も並行して進めていくことになる。

炎症が強度で疼痛が増悪する場合は、肩峰下滑液包炎/三角筋下滑液包炎にステロイド注射を実施する場合がある。

肩峰下インピンジメント症候群が肩峰下滑液包炎の原因である場合は、肩峰下の機械ストレスの軽減を図る運動療法が必要となる。

肩峰下インピンジメント症候群の要因としては次のことが報告されている(図212

  • 腱板機能不全による三角筋とのフォースカップルの破綻
  • 後方関節包の緊張による上腕骨頭の前上方偏位
  • 肩甲骨位置異常と運動異常
  • 姿勢異常

これらの要因は運動療法による処方が必要であり、安静や薬物での改善は見込めない。

・引用文献
1)佐藤大志・他:インピンジメント症候群の機能学的病態把握と理学療法.理学療法 30: 641–649, 2013.

2) 高橋 誠・他:肩関節の痛み肩関節インピンジメント症候群への対応.総合リハ 42: 809–902, 2014.

 

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

 

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