本年度の診療報酬改定において、肝臓リハビリテーションの加算について検討されていたようであるが、結果的には見送られることとなった。
しかし、その必要性については粛々と高まっているように感じる。
そこで本稿では、近年の肝疾患の動向や最新の病名変更などについてまとめてみたい。
近年、肝硬変や肝がんの原因疾患として多くの割合を占めていた、ウィルス性肝炎(B型肝炎、C型肝炎)が減少傾向を示している。
一方で、非ウィルス性肝炎の割合が増加の一途を辿っている。
非ウィルス性肝炎とは、脂肪肝やアルコール性肝疾患のことであり、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcholic fatty liver disease:NAFLD)や非アルコール性脂肪肝炎(nonalcholic steatohepatitis:NASH)を主とする肝疾患である。
これらは、生活習慣病から起因するものがほとんどであるといわれている。
しかしながら、このNAFLD/NASH に含まれる「alcholic」や「fatty」といった言葉が、不適切用語に値する可能性があるとして、2023年6月23日に欧州肝臓学会(EASL)は米国肝臓病学会(AASLD)、ラテンアメリカ肝疾患研究協会(ALEH)と合同で、脂肪性肝疾患の病名を変更することを発表した。
同発表において、脂肪性肝疾患はsteatotic liver disease(SLD)と総称されることとなり、従来のNAFLD/NASHはメタボ リックシンドロームの基準の一部を満たす場合に限定して、metabolic dysfunction associated steatotic liver disease (MASLD)、metabolic dysfunction associated steatohepatitis(MASH)と診断することになったようである(表)。
これを受け、一般社団法人日本肝臓学会および一般財団法人日本消化器学会も病名変更について賛同することを決定した。
したがって、本邦においても今後はこれら病名の日本語訳を検討し、適宜ガイドライン等も改訂される予定である。
投稿者
井上拓也
・理学療法士
・循環認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導士
・サルコペニア・フレイル指導士
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。