
筆者は心臓リハビリテーション(以下、心リハ)に従事しているため、心疾患患者における運動耐容能の評価は極めて重要であると考えている。
さらに言うなら、心疾患患者だけでなく(疾患にこだわることなく)すべてのリハビリ対象者の運動耐容能を把握することが重要であると言い切っていいと考えている。
運動耐容能は生命予後と関連することが知られており、また運動処方における至適運動強度の設定においても運動耐容能を活用することが心リハのガイドラインで推奨されている(腎臓リハビリや糖尿病患者に対するリハビリも同様)。
さらに、運動耐容能を基に日常生活における安全な日常労作や家事、作業、レクリエーションを指導することが可能となる。ちなみに通常のADLを行うためには、7METs必要であると言われている。
運動耐容能を客観的かつ正確に評価するためには、心肺運動負荷試験(Cardiopulmonary Exercise Testing:CPX)を実施する必要がある。
しかし、CPXを実施できる施設は限られている。そこで、日常臨床においても使用することができる運動耐容能を評価するツール『身体活動能力質問表(Specific Activity Scale:SAS)』を紹介する(表)。
表 身体活動能力質問表(SAS)
SASは、日常生活の活動を特定し、その活動量をMETsに対応させた指標である。
表にある1~21の質問項目について順番に質問し、「はい」、「つらい」、「わからない」のいずれかで回答してもらう。
「つらい」という回答がはじめて現れた項目の活動量(METsの値)が、症状が出現する最小運動量となり、その患者の身体活動能力指標(SAS)になる。
ここからは筆者の私見になるが、「つらい」といってもそれぞれ感じ方に差異があるため、「つらい」症状をさらに深堀りして詳細に聴取する必要があると考えている。
すなわち、息が少し切れる程度を「つらい」と回答する場合は、そのSASは嫌気性代謝閾値(AT)レベルであると捉える。
一方、息がかなり切れ「ぜえ、ぜえ」する程度を「つらい」と回答する場合は、そのSAS症候限界レベルと捉える。
至適運動強度や日常生活の指導は、ATレベルで行うことが一般的であるため、ここまで評価することで、臨床で活用することができると考えている。ぜひ一度、SASを使用し運動耐容能の評価をしていただければと思う。
投稿者
井上拓也
・理学療法士
・循環認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導士
・サルコペニア・フレイル指導士
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。