
関節痛は年齢を問わず発生し、痛みや腫れを伴いADLやQOLを低下させる。
関節痛を発生させる代表的な疾患は外傷性の損傷や慢性的な変形性関節症である。
これらは外力により、骨や靭帯などの組織が損傷することが原因である。
組織損傷の場合、レントゲン、MRIの画像検査や整形外科学的検査により比較的容易に確定診断がつきやすい。
一方で、画像検査、整形外科学的検査のみでは確定診断がつきにくい関節炎として、結晶誘発性関節炎がある。
結晶誘発性関節炎は関節内に代謝産物が沈着したことにより白血球による免疫反応が生じ関節局所の炎症が生じるものである。
結晶誘発性関節炎は肩関節・肘関節・手関節・股関節・膝関節・足関節・足指に生じる。
結晶誘発性関節炎の原因となる代謝産物には次のようなものがある。
・尿酸ナトリウム
・ピロリン酸カルシウム二水和物
・塩基性リン酸カルシウム
・シュウ酸カルシウム
これらの代謝産物が関節内に存在するとリンパ球、好中球などの白血球やマクロファージにより免疫反応が亢進し、関節に炎症が生じる(図2)。
結晶誘発性関節炎により関節には、熱感・痛み・発赤・腫れ・関節の機能障害が生じる。
特徴として急性に一気に症状が進むことが多く、関節の痛みや腫れにより患者のQOLを著しく低下させやすい(図1)。
結晶誘発性関節炎の確定診断に必要な検査は次のようなものである。
血液検査:CRP・白血球の上昇の有無/リウマトイド因子の有無
関節液検査:尿酸ナトリウム結晶・ピロリン酸カルシウム結晶の有無/感染の有無
画像検査:X線単純撮影・超音波検査によりカルシウムの有無
一般的に、変形性関節症や靭帯損傷等ではCRPや白血球は上昇しない。
一方で感染性膝関節炎でもCRPや白血球は上昇するため、関節液検査にて結晶や感染の有無を確認する必要がある。
また、リウマチとの鑑別診断も重要となる。
・結晶誘発性関節炎の急性期に対する治療法
炎症の鎮静化を目的とした対処療法が中心となる。
対処療法として
- ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの解熱鎮痛剤
- 炎症症状が強い場合は、ステロイドの関節注射
- 関節水腫に対する関節穿刺
が挙げられる。
急性期では罹患している関節は安静に保つことが望ましい。
激しい関節運動は関節内の結晶をより循環させてしまうことになり炎症を亢進させる可能性が高い。
また、関節の炎症が治まった後は、関節可動域や筋力の回復を目指すリハビリテーションが必要となる。
1週間程度で炎症が治まることが多いが、稀に炎症の寛解に1か月以上の時間がかかる症例もいる。
この場合、関節周囲の機能障害が発生している可能性が高いため、リハビリテーションを追加的に行う必要がある。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。