加齢に伴い全身の関節機能が低下するが、特に膝関節の機能障害は高齢者に好発する問題である。
膝関節の機能障害を助長する問題として関節水腫がある。
関節全体は関節包に覆っており、その内部を関節腔と言う(図1)。
関節腔には少量の関節液が入っており、関節液は正常であれば淡黄色透明である。
関節液には骨表面の摩擦を減らすことや、関節軟骨に栄養を供給する役割がある。
よく「膝に水がたまった」と表現されることが多いが、水とは関節液が過剰に分泌されている状況のことである。
膝に水がたまった場合、外観上、膝蓋骨の形状がわかりにくい状態になり、膝蓋骨周囲の皮膚のしわがなくなる(図2)。
滑膜は、新しい関節液を分泌し、古い関節液を吸収する働きがある。
しかし、新しい関節液の分泌が関節液の吸収を上回ると関節内に関節液が貯留してしまう。
膝関節の軟骨や半月板などを損傷した場合、軟骨や半月板の浮遊物が滑膜を刺激し、滑膜からの関節液の分泌が促されてしまう。
また、関節リウマチや痛風によっても滑膜が炎症し、関節液が増加することもある。
膝関節に水腫が溜まると、関節内圧が高まり膝関節全体の疼痛が生じやすい。
また、屈曲の可動域制限が出やすくなり、立ち上がりや階段昇降に大きな制限が生じやすい。
日常生活の支障が大きい、疼痛が強すぎる場合は、穿刺により関節液を抜いたほうが良い。
関節内の関節液が少なくなれば、すぐに疼痛や可動域は改善する。
関節液の中には軟骨損傷の浮遊物、サイトカイン、尿酸結晶等の炎症性物質があるため、関節液を抜くことは炎症への治療となる。
つまり、過剰に溜まった関節液を抜くことは、関節のさらなる炎症や機能障害を防止するために重要である。
臨床においては関節液の色に注目する必要がある。
●褐色・赤色
骨折、半月板損傷、靭帯損傷などの外傷
●白濁色
感染症、痛風
●濃い黄色で透明
変形性膝関節症
確定診断の一助として関節液を検査し、関節液の種類を確定することも重要である。
一度、膝関節に水腫が貯留すると、関節内の炎症が治まっても再吸収されるまでに数週間から数か月の時間がかかる。
そのため、関節水腫が悪化した場合は、穿刺により関節液を抜いて、速やかに膝関節の運動療法を開始することが得策と言える。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。