心不全には様々な分類があることが知られている。
例を挙げると、心不全の病期別の分類(急性心不全、慢性心不全)や低下する心機能による分類(収縮不全、拡張不全)、症状や身体所見から左右に分ける分類(左心不全、右心不全)、さらに身体活動による分類(NYHA心機能分類Ⅰ度~Ⅳ度)、左室駆出率(LVEF)による分類(HFrEF、HFpEFなど)、心不全の重症度分類(Nohria-Stevenson分類)など数多くの分類がある。
本稿では、身体活動による分類(NYHA心機能分類Ⅰ度~Ⅳ度)と左室駆出率(LVEF)による分類(HFrEF、HFpEFなど)を紹介する。
NYHA心機能分類は、心不全を身体活動別にみた分類でⅠ度~Ⅳ度に分類される(図)。
・Ⅰ度(7METs相当):心疾患(心不全)はあるが、通常の身体活動では症状がみられない
・Ⅱ度(5METs相当):普通の身体活動で、疲労、呼吸困難、動悸、狭心痛などが出現
(通常の身体活動がある程度制限される)
・Ⅲ度(3METs相当):普通以下の身体活動で、疲労、呼吸困難、動悸、狭心痛などが出現
(通常の身体活動が高度に制限される)
・Ⅳ度(1METs相当):安静時にも、呼吸困難を示す
(安静時でさえ、心不全症状や狭心痛出現)
例えば臨床で、心不全患者の評価においてNYHAⅡ度といった情報があれば、その方は普通のADL動作で症状が出現するレベルであり、運動耐容能としては5METs相当であると想起できるようにしておかなければならない。
LVEFによる心不全の分類は、心エコー検査より評価されるLVEFを基に心不全を分類する(表)。
・LVEFの低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction;HFrEF):LVEFは40%未満。収縮不全が主体の心不全。臨床では、「ヘフレフ」あるいは略して「レフ」という。
・LVEFの保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction;HFpEF):LVEFは50%以上。拡張不全が主体の心不全。臨床では、「ヘフペフ」あるいは略して「ペフ」という。
・LVEFが軽度低下した心不全(heart failure with mid-range ejection fraction;HEmrEF):LVEFは40%以上50%未満。境界型心不全。臨床では、「ミッドレンジ」いう。
特に臨床で、循環器医と心不全の病態などの情報交換をする際には、「レフ」・「ぺフ」・「ミッドレンジ」などと当たり前のように出てくる用語である。したがって、心不全に関わる他職種との共通言語として、こういった心不全分類の知識は非常に重要である。
投稿者
井上拓也
・理学療法士
・循環認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導士
・サルコペニア・フレイル指導士
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。