脊柱管狭窄症とは、脊柱管が狭くなる整形疾患である。
50歳代から徐々に増え始め、60~70歳代が好発年齢である。
高齢者の10人に1人は腰部脊柱管狭窄症であり、推定患者数は約580万人と言われている。
腰部脊柱管狭窄症は筋膜性腰痛と異なり、症状が多彩でQOLの低下をきたしやすく、高齢者や家族を悩ませる要因になりやすい。
●脊柱管狭窄症の病態
脊柱管狭窄症は次のような気質的な変化により生じる(図1)。
①黄色靭帯の肥厚
②椎間関節の肥厚
③椎間板の膨隆
④椎体の変形、骨棘
椎間関節や黄色靭帯が肥厚は,加齢の影響により椎間板の水分が減少し椎間板腔が不安定になったことで、強度を補強するために代償的に発生すると考えられている。
特に黄色靱帯は、脊髄の後方にある椎弓の間を結ぶ靱帯であるため、肥厚した場合、容易に脊髄を圧迫する。
●脊柱管狭窄症の症状
次のような症状があれば、脊柱管狭窄症の疑いがあるため、MRIなどの画像診断を受ける必要がある。
・お尻から足にかけての痛みやしびれがある。
・立つ、歩く動作で下肢の後面に痛みやしびれが増強する。
・歩行時に下肢の後面に痛みやしびれが出るため、座って休みたくなる。
●脊柱管狭窄症の予後
狭窄の程度が軽度や中等度であれば、保存療法により良好な予後が期待できる症例も多い。
特に片側の下肢のみにしびれなどの症状が生じる神経根型は症状が改善する症例が多い。
しかし、両下肢のしびれ感や陰部のしびれ、異常感覚が生じる馬尾型では自然寛解はほとんど期待できない。
狭窄が重度である場合は,不可逆性の下肢の筋力低下や膀胱直腸障害を伴うこともあり,手術療法を積極的に選択される。
●リハビリテーションの注意点
脊柱管狭窄症に罹患するとフレイル・サルコペニアが進行することがわかっている。
手術療法などの根治治療が奏功すれば、フレイル・サルコペニアは改善する。
手術前の保存療法においてはフレイル・サルコペニアの進行をいかに抑えるが重要となる。
立位や歩行で行う運動は下肢のしびれなどを増強させることも多いため、座位や臥位でできるストレッチングや筋力トレーニングを実施する。
特に腹筋・背筋のストレッチング・筋力トレーニングは重要であり、腰部の動きを腹筋・背筋で制動することを目的としたコンディショニングが重要である。
腹筋の緊張を入れた状態でのブリッジ運動は腰椎の安定性を高める運動として有効である(図2)。
また、自転車エルゴメーターなどを用いて有酸素運動を行うことも効果的である。
持久力の低下は下肢の毛細血管を減少させ、脊柱管狭窄症に伴う筋緊張の亢進による筋痛を増強させる可能性がある。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。