心房細動の包括管理

日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドラインより、『不整脈治療』2024JCS/JHRS ガイドラインフォーカスアップデート版が発表された(https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Iwasaki.pdf

このガイドラインの中で、今後2050年にかけて本邦の心房細動(atrial fibrillation:AF)の有病率が上昇していくことが懸念されている。

その原因として、人口の高齢化や危険因子、併存疾患の増加が挙げられている。

したがって、これらを是正していくことが必要であり、その中の一つとしてAF患者の包括管理:4段階の治療ステップが示されている(図)。

1段階は、適切な急性期の管理(レートコントロール、リズムコントロール)を行うことで、血行動態を安定させることが優先される。

2段階は、AFの増悪因子の管理である。

AFの増悪因子としては、心不全や高血圧、睡眠時無呼吸症候群、心臓弁膜症、糖尿病などの併存疾患と肥満や喫煙、過度のアルコール摂取、身体活動低下などといった生活習慣に関するものが含まれる。

したがって、急性期の管理が落ち着き、状態が安定した後に行う併存疾患の治療や生活習慣の改善がこの段階である。

3段階は、脳梗塞の予防である。

脳梗塞のリスクをCHADS2スコアやHELT-E2S2などを用いて評価し、リスクの高い患者には抗凝固薬の投与を検討する。

抗凝固薬には、ワルファリンとDOACがあるが、現在ではDOACを使用することが望ましいとされている。

4段階は、リズムコントロール(洞調律維持)やレートコントロール(心拍数の調整)を行い、症状の改善を図る。

リズムコントロールは、薬物療法として抗不整脈薬の使用があり、非薬物療法として電気的除細動やカテーテルアブレーション手術がある。

レートコントロールは、一般的には頻脈性AFの心拍数を調整し、動悸や心不全の発症を予防することが目的となる。

1段階から第4段階までのうち、第2段階における医療従事者の役割は非常に大きいと考えられる(第2段階以外は医師の役割が大きい)。

そのため、医療従事者である我々はAFの増悪因子を把握・評価し、患者教育・生活指導にあたることがAF患者の管理において極めて重要である。

 1)2024JCS/JHRS ガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療(https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Iwasaki.pdf

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・循環認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導士
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

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