変形性股関節症は臼蓋の形態学的な不適合や形成不全などが股関節の不安定性を引き起こし,周囲の関節滑膜や関節包に対して物理的炎症を起こすことで生じると考えられる。
臼蓋形成不全は股関節の臼蓋の形成が不十分で浅いことにより、大腿骨頭を十分に覆うことができない病態である。
先天的要因が多いが、一部は後天的な要因で生じると言われている。
大腿骨頭の80%〜90%が臼蓋で覆われることが理想である。
臼蓋形成不全は骨頭を覆う臼蓋の面積が狭く、股関節が不安定となる。
臼蓋の安定性を評価するにはCE角が有効である。
CE角とは大腿骨頭の中心を通る垂線と、臼蓋の外縁を結ぶ線がつくる角度のことである(図1)。
成人のCE角正常値は25~30度であり、20度以下だと臼蓋形成不全と診断される。
このCE角の数値が小さいほど臼蓋形成不全の傾向と言える。
臼蓋形成不全では大腿骨頭と臼蓋の接触面積が狭いため、大腿骨頭・臼蓋の荷重の負担が大きくなり軟骨を損傷しやすい。
軟骨が損傷すると、軟骨の破片が関節内を浮遊し、滑膜などを刺激し滑膜炎が生じ疼痛が生じる。
疼痛により股関節周囲筋のスパズムを起こし,それによる筋短縮が生じやすくなる。
その結果、股関節の可動域制限が生じやすくなる。
股関節の関節可動域制限が生じると、股関節周囲筋の筋短縮や筋萎縮も生じやすくなり、股関節機能の破綻をきたしやすくなる。
股関節の関節可動域制限が生じると立位・歩行が特徴的なものとなりやすい。
例えば、股関節伸展・外旋制限が生じると立位姿勢では股関節屈曲、内旋位となる。
そのため、脊柱起立筋や大殿筋は常に緊張しやすくなり、腰部から殿部の疼痛が生じやすくなる。
また、腸腰筋や小殿筋・中殿筋は短縮位となり短縮や萎縮を生じやすくなる。
小殿筋・中殿筋の短縮や萎縮に伴う筋力低下が生じると、トレンデレンブルグ徴候やデュシャンヌ兆候が顕著となり、歩行がより不安定となる(図2)。
変形性股関節症の初期は痛みがほとんど現われないことが特徴である。
しかし、歩きづらい、腰部や股関節に違和感がある、股関節が抜けそうなどの症状があれば変形性股関節症の可能性があるため、早期の受診とリハビリテーションが必要となる。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。