足関節内側捻挫とは、足首を内側にひねること(足関節外反)で起こる靭帯損傷である。
多くの症例では三角靭帯を損傷する(図1)。
三角靭帯は、3つの異なる部分で構成されている。
この靭帯は3つの表在繊維の扇状の基部となって三角靭帯の頂点は内果に付着している。
三角靭帯の主要な機能は距腿関節、距骨下関節、距舟関節による外返しの制動である。
三角靭帯は強靭であり、さらに外返しには骨性の制限もあるため比較的損傷しにくい。
ただし、足関節背屈・外反方向に高負荷が加わり損傷した場合は脛骨や腓骨、距骨などの骨折や長母指屈筋や後脛骨筋の筋損傷を伴うことも多い。
足関節内側靭帯損傷は原則保存療法によって治療を行う。
軽度損傷では1週間ほど弾性包帯で固定し、早期に理学療法を開始する。
高度損傷では最大3週間はギプス固定を行った後に装具を装着し理学療法を開始する。
装具は足関節の不安定性がなくなるまで、6〜8週間装着する。
理学療法の目標は以下の手順で進めることが多い。
- 可動域の改善
- 筋力の改善
- 歩行の獲得
- スポーツ動作の獲得
可動域の改善と筋力の改善においては損傷した三角靭帯の疼痛が生じることがあるが、長母指屈筋や後脛骨筋(図2)の足関節内果後方を走行している部位の伸張痛や短縮痛も伴うことも多い。
これは受傷した時に三角靭帯だけでなく、当該筋も損傷していたことが示唆される。
スポーツ復帰のためには足関節周囲の筋力強化が重要となる。
多くの場合、固定期間や免荷期間に患側足関節周囲の筋力が著しく低下する。
そのために、足関節の外反・内反を制動する能力が低下し、足関節の不安定性を惹起しやすくなる。
足関節が不安定になると、荷重時に膝関節や股関節で代償的に足関節の制動を行うようになるため、膝関節や股関節に痛みを引き起こすことが多い。
足関節不安定症を放置すると関節軟骨の損傷や変形性足関節症をもたらすことになるため、足関節周囲の筋力強化に重点を置いた理学療法が必要となる。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。