2024年度の診療報酬・介護報酬改定において、口腔管理に関する加算が新設されることとなり、より一層この分野におけるニーズが高くなっていくと思われる。
そこで本稿では、口腔機能と口腔機能低下症の概念について、述べさせていただくことにする。
口腔機能とは、『捕食(食べ物を口に取り込むこと)、咀嚼、食塊の形成と移送、嚥下、構音、味覚、触覚、唾液の分泌などに関わり、人が社会のなかで健康な生活を営むための必要な基本的機能である』。
口腔機能が低下すると、食事のバランスが悪くなることが知られており、それによって運動機能や生理機能までも正常に保つことが困難になる。
栄養素でいうと、ビタミン・ミネラル・タンパク質・食物繊維、食品でいうと肉・魚介類・野菜・果物・豆・きのこ類などの摂取量が減少する。逆に、炭水化物・穀類・菓子類や砂糖・塩などを使用した食品の摂取量が増加する。
このような食事のバランス不良は、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の発症や重症化のリスクが高くなることに繋がる。さらに、食事バランスだけでなく、食事量も減少することで体重や骨格筋量を維持することも困難になるといった悪循環が起こる。
すなわち、口腔機能の低下は、栄養障害から生活習慣病の惹起、身体機能低下までの負の連鎖を形成する。
では、口腔機能が低下する疾患である『口腔機能低下症』とは何であろうか。
口腔機能低下症とは、『加齢だけでなく、疾患や障害など様々な要因によって、口腔の機能が複合的に低下している疾患である』。
これをそのままにしていると、咀嚼障害、摂食嚥下障害など口腔の機能障害を引き起こし、低栄養やフレイル、サルコペニアを進展させるなど全身の健康も損なうとされる。
口腔機能低下症は、以下の7項目のうち3項目以上該当する場合をいう(図)。
1.口腔衛生状態不良(口腔不潔)、2.口腔乾燥、3.咬合力低下、4.舌口唇運動機能低下、5.低舌圧、6.咀嚼機能低下、7.嚥下機能低下
これら各機能をカテゴリーごとに分類すると、1.口腔不潔と2.口腔乾燥は『口腔内環境』、3.咬合力低下と4.舌口唇運動機能低下と5.低舌圧は『個別的機能』、6.咀嚼機能低下と7.嚥下機能低下は『総合的機能』を評価していることになる。
そして図に示す通り、評価により口腔機能低下症となった場合は、歯科領域において専門的なアプローチが必要となる。
・参考文献
1)「口腔機能低下症の検査と診断-改訂に向けた中間報告-」 一般社団法人日本老年歯科学会学術委員会,老年歯科医学,2018
投稿者
井上拓也
・理学療法士
・循環認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導士
・サルコペニア・フレイル指導士
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。