臨床では、高齢者から「足にしびれを感じる」という訴えは多い。
リハビリ職種が「足がしびれる」と聞くと短絡的に「椎間板ヘルニア」や「坐骨神経痛」と考えてしまうが、それ以外にも様々な原因がある。
原因①:脊柱管狭窄症
脊柱管の中には脳から続く「神経」が通過しているが、椎間板、椎間関節、黄色靭帯の変形が生じると脊柱管内で神経が圧迫され、足にしびれや疼痛を感じるようになる。
症状が進行すると、歩行時間が極端に短くなる間欠性跛行が生じるようになる。歩行障害が進行すると内視鏡による手術を行うことが一般的である。
原因②:閉塞性動脈硬化症
動脈硬化によって血管の狭窄や閉塞が起こりやすくなる。
特に足の動脈が狭窄・閉塞した場合、栄養や酸素の供給が不十分になり、足に冷感や疼痛が生じやすくなる。
多くの患者は下腿三頭筋の疼痛を訴えることが多い。基本的には生活習慣の見直し、血圧コントロール、食事の見直しを行うが、足の壊死が出てきた場合は血管再建の手術を行う。
原因③:糖尿病
高血糖によって毛細血管の血流が低下し、神経細胞に必要な酸素や栄養が不足することにより神経損傷が生じると考えられている。
これを糖尿病性神経障害と言う。糖尿病性神経障害の初期は痺れが主体の症状であるが、糖尿病が悪化すると、感覚鈍麻となり歩行、立位等に大きな影響が出てくる。治療は、血糖コントロールが主となり、食事制限、運動、服薬を複合的に行う。
原因④:足根管症候群
内果と踵骨の間にある「足根管」が何らかの原因で狭くなり後脛骨神経が絞扼されることで、足部が痺れる。
足根管は屈筋支帯により覆われているが、その下で何らかの異常が生じると発症する。
外傷、ガングリオン、靴、反復される足部への負荷などが原因として考えられる。基本的には保存療法で経過観察を実施するが、症状が悪化する場合は手術を行うこともある。
その他、腓骨神経麻痺、腓腹神経麻痺、多発神経炎、脳血管障害なども痺れの原因になる。
足の痺れを訴える患者がいた場合は、安易に様子をみることなく早期受診を促すことが重要である。
脊髄神経のトラブルでは排尿障害や歩行障害が起こることや重篤な内科疾患が隠れている場合もあるため、慎重な対応が必要である。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。