形態測定(下肢長)について

本稿では、理学療法評価の1つである形態測定のうち『下肢長』について、その目的や脚長差が生じている際の基本的な解釈(原因部位や疾患)を解説する。

下肢長を測定する目的は、①左右の下肢長の比較、②骨折の有無や転移・偽関節の有無、③股関節・膝関節の拘縮・変形の有無、④股関節脱臼やペルテス病などによる脚長差などの身体情報を得ることである。

下肢長には、棘果長(spinomalleolus distance:SMD)、転子果長(trochantomalleolus distance:TMD)、大腿長、下腿長、足長などが含まれる。各々の計測方法・部位(ランドマーク)は以下に示す通りである。

SMD:上前腸骨棘(ASIS)から内果までの最短距離を測る

TMD:大転子から外果までの最短距離を測る

大腿長:大転子から大腿骨外側上顆または膝関節裂隙までを測る

下腿長:大腿骨外側上顆または膝関節裂隙から外果までを測る

このように、測定した長さを通常は0.5cm間隔で記録する。

下肢長を測定した結果、1.0~1.5cmの左右差は正常範囲と考えられる。

しかし、この範囲でも脚長差による症状が出現する場合がある。脚長差が生じていた場合には、表『脚長差の意味』に示す如く解釈することができる。

SMDに左右差が有り、TMDや大腿長・下腿長に左右差が無い場合は、障害の原因部位として大転子より近位、つまり股関節に問題があると評価することができる(代表的な疾患は表を参照)。

また、SMD・TMDともに左右差が有り、大腿長や下腿長に左右差が無い場合は、大腿骨や下腿(脛骨・腓骨)には問題がなく、それらの骨を連結している関節(股関節または膝関節)の問題といえる。

さらに、SMD・TMD・大腿長に左右差が有り、下腿長に左右差が無い場合は大腿骨の骨折を疑い、SMD・TMD・下腿長に左右差が有り、大腿骨に左右差が無い場合は下腿骨の骨折を疑う所見となる。

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・循環認定理学療法士
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導士
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

 

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