肩石灰沈着性腱炎について

肩関節周囲炎の患者の中には疼痛が強く、運動制限が数か月続く人がいる。

そのような方に多い疾患の一つに肩関節石灰沈着性腱板炎がある。

石灰沈着性腱板炎は40代から50代の女性に好発することが多い。

石灰が沈着する部位は棘上筋がほとんどを占めている。

急性期の患者の特徴として以下のようなものがある。

  1. 激しい夜間痛
  2. 安静時痛があるため肩関節を動かせない
  3. 刺すような痛み

また、慢性期になっても6か月以上の疼痛が続くことが多い。

石灰沈着性腱板炎においてはレントゲン画像・CT画像による確定診断が重要である。

レントゲン画像・CT画像では石灰化の描出は容易である。

確定診断は医師の仕事ではあるが、リハビリ職種も介入の前には必ず画像を確認し、石灰の大きさや位置について確認する必要がある。

特に注意したいのは、石灰が大きい場合,肩峰下圧が高まり、インピンジメントの症状が強くなることである。

このような場合、積極的に可動域練習を行うと肩峰下周囲の組織の炎症をより進行させてしまう。

また、無理な可動域練習により棘上筋から出血が起こると、血漿からのカルシウム成分が沈着し、症状が悪化する可能性がある。

石灰沈着性腱板炎における石灰は最終的に吸収され石灰がなくなるのが一般的な予後であるが、リハビリテーションの介入により、石灰の再形成することは絶対的に避けなければならない。

また、石灰の吸収が認められない難渋症例では穿刺吸引とステロイド注射を実施する。

肩に強い痛みが長期間続いている症例で確定診断を受けていない症例がいた場合は、石灰沈着性腱板炎も疑われるため、確定診断がない状況で、積極的な可動域練習は避けるべきである。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師向けセミナー

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