
血液透析を実施する上で、欠かすことのできない『バスキュラーアクセス』(主に、内シャント)(図)について解説する。
血液透析は、腎機能が著しく低下した方の身体から、血液を体外に取り出し(脱血)、浄化させ(透析を行い)、再び体内に血液を戻す(返血)治療法である。
その血液透析を安全かつ有効に行うために、手術にて静脈と動脈を縫い合わせて造設した脈管のことをバスキュラーアクセスという。
なぜそのようなバスキュラーアクセスが必要かというと、血液透析を行う際に十分な血液量が確保できるようにするためである。すなわち、血液透析には150~200mL/minの多量の血液採取が必要であり(有効な透析治療を行うためには、350mL/min以上が必要との報告もある)、その状態をおおよそ4時間実施する。
静脈は皮下の表層を走行するため、穿刺することは容易であるが、低圧であり多量の血液採取が困難である。一方、動脈は皮下の深層を走行しており穿刺は困難であるが、高圧であるため多量の血液採取を見込める。
したがって、静脈と動脈を縫い合わせて結合させることで、高圧の動脈から低圧の静脈へと血液が流れ込む。術後しばらくすると、血管壁が柔らかな静脈は内シャント血管として太くなり、350~600mL/min(多い場合には1,000mL/min)の内シャント血が流れるようになる。
このように造設したバスキュラーアクセス(内シャント)に対し、血液透析を実施する際に、脱血側と返血側の針をそれぞれ1本ずつ穿刺することで、有効に透析治療が実施可能となる。
ちなみに、バスキュラーアクセスを造設する部位は、基本的には利き手ではない上肢の前腕部分が多い。
投稿者
井上拓也
・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
・サルコペニア・フレイル指導士
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。