歩行自立の判断を明確にするために必要な知覚・認知情報処理とは?

皆さんは患者様の歩行自立への判断で悩んだことはないだろうか?

特に働き始めた頃には悩むことが多いかと思う。

「訓練中は一人で歩行できるにもかかわらず、病棟内の移動は見守りレベルのままだ」

「だいぶ歩けるようになってきたけど、歩行自立へとADLをアップしても転倒しないだろうか?」

「本当に安全に病棟内の移動が可能だろうか?」

私も1年目の頃は「自立にしようか、見守りのままでいこうか」と迷いながら、何を評価すればいいのかわからずに歩行自立へと変更することができなかった経験がある。

そんな経験から、今回は歩行自立に必要な知覚・認知情報処理についてお話しさせていただければと思う。

❶歩行自立に必要な知覚・認知情報処理

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まず、知覚・認知情報処理とは、『情報の選択と統合』、『評価』、『意思決定』の過程をいう。

情報の選択と統合
→必要な情報を選択し複数の情報を一つにまとめること

・評価
→まとめた情報を経験や記憶、目的と照らし合わせていくこと

・意思決定
→解決すべき状況に対してどうるすかを判断すること

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脳機能では頭頂葉、後頭葉、側頭葉、高次感覚野、前頭前野、前頭葉、補足運動野が担っている部分になる。

例えば、歩行中に足元を見ている患者様は前方から来る人や障害物を適切に知覚・認知することが困難となる。

ぶつかるギリギリで気づくと同時に視線が足元から外れ、バランスを崩してしまい不安定な状態になるのであれば歩行自立にすることはできない。

この場合は過度に視覚情報に依存して歩行をしている、もしくは他の感覚情報を歩行に有効利用できていない可能性が考えられる。

そのために、視覚を歩行以外に向けることで歩行に必要な情報が入らなくなり、その結果バランスを崩し転倒のリスクが高まってしまう。

歩行自立に必要な知覚・認知情報処理とは、『情報の選択と統合』、『評価』、『意思決定』の過程を行う脳機能である。

❷知覚・認知情報処理を評価する

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どんな感覚(情報)を入力して、どんな運動(結果)になったのかということから、感覚がどのように処理されたのかを評価していく。

ここでの処理というのは、『情報の選択と統合』、『評価』、『意思決定』

入力した感覚により、出力された運動がどのように変化したかを捉えなければならない。

なぜならば、見える部分は入力と出力であり、処理の部分は可視化することが難しいからである。

また、出力はさまざまであり、歩行のみではなく言葉にしてもらうことも出力。

私は臨床の中でよく使うのは、言語化である

あるシチュエーションにおいて「身体はどんな状態ですか?」「これからどうしますか?」という入力をして言葉で出力してもらうこともする。

何かしらの処理ができていると、「~な状態だ」「こんなふうになっている」や「~していく」などの返答がある。

処理ができていない場合は「わからん」「…」など、返答の形が合っていない。

これが適切かどうかを判断することで、知覚・認知情報処理の評価を行う。

簡便な歩行の転倒リスクを評価する方法としては、デュアルタスク(二重課題)条件下における運動パフォーマンスを測定することで、歩行制御に対する注意の関与(つまり知覚・認知情報処理)や高齢者の転倒危険性について検討が可能となる。

「Stop Walking While Talking(SWWT)test」というものがある。

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SWWT testとは歩行中に質問という認知的負荷をかけたときに立ち止まるか否かで転倒リスクを予測するテストである。

質問の内容としてはデュアルタスクという観点からすると、より難易度の高いエピソード記憶(直前の食事内容、服薬状況など)に関する質問をした場合に立ち止まり現象が頻出しやすいと報告されている。

必ずしもSWWT testが有効であると言えない場面もありますので、TUGや10m歩行テストなどの結果を合わせて転倒リスクを判断することが望ましい。

❸まとめ

今回は病棟内の移動を歩行自立にするために必要な知覚・認知情報処理評価についてお伝えした。

歩行自立に必要な知覚・認知情報処理とは、入力された情報を『選択・統合』『評価』『意思決定』していくことである。

評価するためには、入力した感覚がどのように処理されて出力されているのかという一連の流れ(入力→処理→出力)を明確にしていく必要であり、入力する感覚が変わることによる出力の変化を感じ取ることが重要となる。

出力の形はさまざまであり、運動のみではなく言語化することでどのように処理したのか見えてくることもある。

歩行の転倒リスクを簡便に評価する方法として、「Stop Walking While Talking(SWWT)test」というものがある。

歩行中に質問をして(認知性負荷)、立ち止まるかどうかで転倒リスクを評価するテストである。

質問の内容としては難易度の高いエピソード記憶が立ち止まり現象が多いため有用であると考える。

投稿者
堀田一希

・理学療法士

理学療法士免許取得後、関西の整形外科リハビリテーションクリニックへ勤務し、その後介護分野でのリハビリテーションに興味を持ち、宮﨑県のデイサービスに転職する。
「介護施設をアミューズメントパークにする」というビジョンを掲げている介護施設にて、日々、効果あるリハビリテーションをいかに楽しく、利用者が能動的に行っていただけるかを考えながら臨床を行っている。
また、転倒予防に関しても興味があり、私自身臨床において身体機能だけでなく、認知機能、精神機能についてもアプローチを行う必要が大いにあると考えている。そのために他職種との連携を図りながら転倒のリスクを限りなく減らせるよう日々臨床に取り組んでいる。

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