烏口上腕靭帯について

肩関節周囲炎や肩関節の術後などでは、肩関節外旋可動域制限が必発する。

肩関節外旋可動域制限は肩関節外転を阻害し、更衣動作などを著しく阻害する。

そのため、臨床では肩関節外旋可動域制限の改善は極めて重要である。

肩関節外旋制限の要因は以下のようなものが考えられる。

1stポジション

・靭帯
烏口上腕靭帯
上関節上腕靭帯
中関節上腕靭帯

・筋
肩甲下筋上部線維
棘上筋前部線維
大胸筋上部線維
上腕二頭筋長頭

2ndポジション

・靭帯
下関節上腕靭帯
烏口上腕靭帯

・筋
肩甲下筋下部線維
大胸筋下部線維
大円筋
広背筋

肩関節の回旋運動は,屈曲初期では内旋し屈曲平均80°から外旋し始め,最大屈曲位で外旋は最大となる1) 。

外転でも肩関節外旋が必要となるため、外旋可動域の改善は屈曲、外転の改善に繋がる。

特に烏口上腕靭帯は1st、2ndポジションにて外旋制限の要因となる。

肩関節周囲炎では、腱板疎部や烏口上腕靭帯の炎症後に癒着や瘢痕化が生じ、外旋制限が生じやすい。

烏口上腕靭帯は上肢下垂位にて上腕骨が下方に重力により偏移するのを制御している。

したがって、抗重力の下垂位では常にストレスが生じている部位である。

そのため、烏口上腕靭帯に炎症がある場合は、安静座位や立位でも烏口上腕靭帯に疼痛を感じやすい。

長期にわたる炎症が烏口上腕靭帯に生じている患者は、肩関節外旋制限が改善しない症例が多い。

烏口上腕靭帯は炎症を起こすと肥厚しやすく、肥厚と外旋可動域制限には正の相関があると言われている2ため炎症の寛解は治療上、重要である。

しかし、炎症があるときに、烏口上腕靭帯を伸長させる負荷を与えると、瘢痕化を助長する可能性があるため、安静時痛などの炎症の症状が低下してから烏口上腕靭帯を伸長させることが望ましいだろう。

●引用文献
1)Harryman et alThe role of the rotator interval capsule in passive motion and stability of the shoulder. JBJS,1992
2)中野幸雄:烏口上腕靭帯とMRIによる評価~外旋拘縮との関連性について~. 関 節 , 2 0 0 1 ; 2 5 巻 第 2 : 2 3 5 - 2 3 9 .

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師向けセミナー

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