関節可動域練習の優先度

関節可動域range of motion、以下ROM)制限に対する治療を考える上で、治療(ROM練習)の優先度について考えてみたい。

ここでは、肩関節におけるROM制限の例を挙げ、病態の特性や運動学的視点、あるいは患者のADL上必要なROM等は一旦考えず、単純に日本整形外科学会が規定する『参考可動域角度』との差およびその差から導き出される『制限されている割合』から考えていきたいと思う。

表のごとく、右肩関節にROM制限のある患者のROMが屈曲120°、伸展50°、内転0°、外転80°、内旋70°、外旋30° であったとする(伸展と内転はROM制限なし)。

それぞれ参考可動域角度との差は屈曲60°(180°-120°)、伸展0°(50°-50°)、内転0°(0°-0°)、外転100°(180°-80°)、内旋10°(80°-70°)、外旋30°(60°-30°)となる。

この参考可動域角度との差を、制限されている割合でみると、屈曲30%、外転56%、内旋12%、外旋50%と計算することができる。

すなわち、制限されている割合から考えると外転が最もROM制限が強いといえ、次いで外旋、そして屈曲、内旋という順になる。

よって、ROM練習を実施する際の優先度は①外転、②外旋、③屈曲、④内旋の順に行うべきと考えるのはいかがであろうか。

実臨床では、ROM制限の制限因子であったり、そのROM制限が活動制限・参加制約にどのような問題を生じさせているのか等も当然考慮する必要はある。

しかし、ROM練習の優先度について迷ったり、悩んだりした際には、シンプルに数値から考え、最も障害されている方向から治療の優先度を決定しても良いのではないだろうか。

投稿者
井上拓也


・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師向けセミナー

リハビリマスタースクールでは鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師向けのセミナーを定期的に開催しております。セミナーの詳細はこちらをご覧ください(株式会社ワークシフトのサイトに移動します)

おすすめの記事