
変形性股関節症は高齢者に発生する変性疾患の一つである。
変形性股関節症が進行すると疼痛と可動域制限が顕著となる。
特に疼痛はQOLを著しく下げるため、疼痛への対応はリハビリテーションでは重要となる。
変形性股関節症患者の疼痛は股関節可動域制限と関係がある。
●股関節屈曲制限がある場合
股関節屈曲が20°程度の制限を受けている場合、歩行時の下肢の振り出しが困難となり、代償的な動きが増加する。
振り出し側の骨盤を挙上して脚を振り出すことや、股関節を外転してから前方に振り出す代償動作が生じる。
骨盤を挙上する場合、腰方形筋、広背筋の筋緊張亢進、股関節が外転する場合は中殿筋、小殿筋の筋緊張亢進が生じやすくなり、疼痛が生じやすくなる(図1)。
●股関節伸展制限がある場合
股関節伸展制限がある場合、立脚中期から後期にかけて股関節屈筋が伸長位になりにくいため、その後の下肢の前方への振り出し時に股関節屈筋の弾性力を用いた振り出しが困難であるため、股関節屈筋の随意的な収縮を必要とする。
そのため、股関節屈筋である大腰筋、腸骨筋、縫工筋、大腿直筋、恥骨筋の筋緊張が高まり、疼痛が生じやすくなる(図2)。
また、股関節伸展制限があると立脚中期から後期にかけて、骨盤前傾、腰椎前弯が増強する。
腰椎前弯が過剰になると椎間関節や棘間靭帯への圧縮ストレス、椎間孔の狭小化が生じ、腰痛を発生させやすい。
変形性股関節症は関節軟骨や骨が変性・損傷し、炎症が増強することで疼痛が生じやすいが、関節可動域制限によっても上記のような理由により、筋に二次性の疼痛が生じやすくなる。
そのため、関節可動域制限の改善は疼痛増悪の予防のために重要である。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。