介護職とリハ職の連携のヒント

〜介護職とリハ職の連携強化はリハビリの効果を飛躍的に向上させる〜

リハビリテーション(以下、リハビリ)では、筋力強化練習、立ち上がり練習、歩行練習、生活関連動作練習などを行い、利用者の生活機能の回復や維持を図る。

運動療法や動作練習を行う前提条件として、体調やバイタルサインの安定がある。

利用者の体調が悪ければ、リハビリへの意欲は沸かず、リハビリの拒否にも繋がる。

また、バイタルサインが安定していなければ、リハビリ中の急変や事故のリスクも高くなる。

加えて介護職とリハ職における利用者のADLレベルの共有も重要である。

利用者のできるADLが生活場面で発揮されないことは多く見られる。

この原因の一つは、介護職とリハ職の利用者のADLに関する情報の共有不足がある。

今回は、介護職とリハ職の連携における2つの視点である「体調やバイタルの安定」と「ADLの情報共有」の重要性について解説をする。

●体調やバイタルサインの安定

体調やバイタルサインの安定はリハビリを実施する上での前提条件となる。

介護施設や在宅において体調やバイタルサインが不安定になる原因は次のようなものがあります。

  1. 低栄養
  2. 貧血
  3. 糖尿病
  4. 脱水
  5. 呼吸不全
  6. 心不全

これらの症状は、高齢になればなるほど生じやすくなるものであるが、その予防や改善には日頃のケアが重要となる。

良質なケアの実践には介護職のスキルが欠かせない。

食事摂取量の把握、嚥下状態に応じた適切な食形態や食事介助、飲水や尿量の評価、下肢の浮腫や呼吸の評価等の日常の中で適切なケアや評価を行うことで、体調悪化の予兆を掴むことができる。

少しでも異常を感じれば、医師、看護師、セラピストと連携し、必要に応じて医療的な介入をすることが出来れば体調不良の悪化を防ぐことが出来る。

また、リハ職も体調やバイタルサインに異常を感じれば、介護職にケアの状況を確認する必要がある。

例えば、下肢の浮腫みが生じている利用者がいた場合、心不全の可能性がある。

その場合、リハ職は介護職に、体重の変化がないか?夜はちゃんと睡眠がとれているか?水分摂取は過剰になっていないか?などの確認をして、心不全の評価をしなければならない。

つまり、介護職、リハ職ともに内科系の疾患やその評価方法についての知識がなければ、連携をすることは困難となる。

医師や看護師と比較して、介護職とリハ職は内科系の疾患に関する知識が乏しいと言えるので、介護職とリハ職の共同で勉強会などを実践することで、知識を高めあう必要性がある。

●ADLレベルの情報共有

一般的にリハ職は介護職が利用者のADL能力を全て把握していると考える傾向がある。

介護職は利用者の生活支援を直接的に担当しており、利用者の日々の変化を把握しているから」という理屈からである。

しかし、実際はどうだろうか?

特に施設系介護職の方は、数多くの利用者のケアを担当する。

しかも、勤務シフトによってはフロアーが異なることは日常茶飯事である。

このような状況において、介護職が利用者のADLの能力やその変化を詳細に把握することはほぼ不可能ではないか?

つまり、介護職が利用者のADLの変化を把握して、その変化に基づき、生活を支援していくのは難しいと言える。

しかし、リハ職は「介護職がADLを把握している」と信じているため、ADLの能力が上がれば、介護職の方でADLの調整をしてくれると考えている。

例えば、リハビリにて四点杖歩行の方がT字杖歩行に変化した場合、リハ職は、「介護職がT字杖歩行を利用者に促してくれる」と考えている。

しかし、実際は大変忙しい現場で働く介護職の方が、ADLの変化に気づくことは難しく、利用者へのADL向上の関りは難しいのが実情である。

このような状況を避けるためには、「リハ職が介護職に利用者のADLの変化を適時伝える仕組み」が重要となる。

著者のクライアント施設でADLの変化を伝える仕組みとして取り組んでいるものは次のようなものがある。

・利用者のベッドサイド・車椅子に「できるADL」を記入したシートを掲示する

・リハ職が入居スペースで介護業務に、介護職がリハビリスペースでリハ業務に当たり、利用者のADLについて、常に情報交換ができる体制を構築する。

今回は介護職とリハ職の連携のヒントを「体調やバイタルの安定」と「ADLの情報共有」の2つの視点から述べた。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師向けセミナー

リハビリマスタースクールでは鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師向けのセミナーを定期的に開催しております。セミナーの詳細はこちらをご覧ください(株式会社ワークシフトのサイトに移動します)

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