高齢者虐待防止

近年、高齢者の増加に伴い高齢者虐待の件数も右肩上がりで増えている。

高齢者が有する認知症や身体機能の低下により、家族や介護者との関係性が悪化する等が原因となり、虐待が増えていると考えられる。

このような背景より2020年度介護報酬改定にて全ての介護事業者に、高齢者虐待防止の義務が課せられた(図1)。

したがって、介護保険事業所に勤めるリハビリ職種は高齢者虐待に関する知識やその対応方法について知っておく必要がある。

高齢者虐待防止への取り組みの第一歩は、「虐待の定義」を知ることである。

虐待を認知することができなければ、虐待への対応は不可能である。

虐待の定義は次のように定められている。

●身体的虐待
高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴力を加えること。

介護・世話の放棄・放任
高齢者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること。

心理的虐待
高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

性的虐待
高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること

経済的虐待
養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること

以上のように虐待の原因は様々である。

医療スタッフや介護職の知識や技術が乏しいため意図せずに虐待につながることがある。

また、時に人員不足などから十分なケアや対応が疎かになり、結果的に虐待となることもある。

特に以下のようなケースは虐待と判断されることがある。

・更衣に時間がかかるため、無理やりに衣服の着脱を全介助で行う
・忙しいことを理由にスタッフコールを無視して、長時間放置してしまう
・食事動作のスピードが遅い利用者に無理やり食事介助を行う
・「転倒が危ない」という理由で、歩行などを禁止しベッド上の安静を強いる

リハビリ職種はこのような事象を察知した場合、速やかに何らかの対応を行う必要がある。

高齢者虐待を察知した場合は以下の点に留意した対応が必要である。

・高齢者の安全確保を最優先する
・常に迅速な対応を意識する
・単独ではなく組織で対応する
・関係機関と連携して援助する

施設で高齢者虐待を察知した場合は、速やかに施設管理者に報告・相談が必要である。

よく問題となるのは在宅で高齢者虐待を察知した場合において、どこに報告・相談をすればよいのかわからないことである。

在宅にて虐待を受けていると思われる高齢者を察知した場合、各市町村担当窓口や地域包括支援センターに通報する。

通報、届出を受けた市町村や地域包括支援センターは虐待の事実を訪問等により確認し、必要に応じて高齢者の保護や養護者への支援が行われる。

その際、多職種が参加したケース会議などが開催されることが多く、リハビリ職種も虐待防止の観点からの意見を求められため、リハビリ職種も虐待防止に関する知識を持ち合わせておく必要がある。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師向けセミナー

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