臓器連関

本邦の超高齢社会において、高齢者では複数の併存症を有する患者が多くなり、内部障害を無視したリハビリを展開することは無理があると言っても過言ではない。

特に、安全面に配慮したリハビリを実施することを考えた場合、内部障害に対するリスク管理をすることが、まず優先すべきではないだろうか。

そうした中、内科系の勉強をしていると、『臓器連関』もしくは『多臓器連関』という用語を目にすることが多いかと思われる。

臓器連関とは、「各臓器の障害が両方向性に影響を及ぼし、各々の臓器障害が進行していくこと」である。

代表的な臓器連関には、以下に示すようなものがある。

・心腎連関
心機能が低下すると、心拍出量が低下することから腎臓への血流量も同じく低下する。腎臓への血流量が低下し腎機能が低下すると、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系が活性化し、心臓に対する前負荷や後負荷が増加する。
すなわち、心疾患患者は高率に慢性腎臓病(以下、CKD)を合併し、またCKD患者では心疾患の発症率が高くなる。

心肝連関
重症心不全患者では、心拍出量の低下に伴い肝臓への血流量が低下する。また、右心不全患者では肝うっ血により肝機能障害が起こる。
このようなメカニズムにて、①グリコーゲンの貯蔵、②有害物質の解毒や分解、③胆汁の分泌、④たんぱく質の合成といった肝機能が障害される。

心腸連関
心機能低下による腸菅に対する低灌流もそうであるが、特に心不全によって腸菅にうっ血が生じることで腸機能が低下する。
腸機能が低下すると、栄養の吸収障害によって、栄養状態が悪化する可能性が非常に高く、心臓悪液質といった状態を招くことになりかねない。
また、腸内細菌は動脈硬化のリスク因子の1つとして考えられており、動脈硬化性疾患により心血管疾患を惹起することも考えられる。

心骨格筋連関
心不全患者では、骨格筋に特徴的な変化が生じる。
すなわち、骨格筋量の減少、タイプⅠ線維の減少(相対的なタイプⅡ線維の増加)、タイプⅡaからタイプⅡb線維へのシフト、ミトコンドリア量の減少、酸化系酵素の低下(相対的な解糖系酵素の上昇)等である。
これらの要因によって、易疲労性や運動耐容能の低下につながる。
このような末梢組織である骨格筋の影響による運動耐容能の低下は、中枢である心臓への負荷となり、さらなる心機能低下となる可能性が高い。

以上、心機能低下を中心とした臓器連関について端的に述べた。

その他にも、心脳連関や肺腎連関、骨格筋-肝連関、肝肺症候群等がある。

1つでも内部障害を有している高齢患者では、その1つの疾患が顕在化しているだけで、他の関連臓器の機能も低下している可能性が極めて高い。

したがって、高齢者のリハビリに関わる方や内部障害に興味がある方は、ぜひ勉強していただければと思う。

投稿者
井上拓也


・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

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