
気温が高い6月から9月にかけて高齢者の脱水症リスクは非常に高い。
脱水症は命を落とすこともあり、リハビリテーション職種にとっても脱水症のリスク管理は重要である。
ここでは脱水症の脱水症のメカニズムと高齢者が脱水症になりやすい理由を解説したい。
脱水症は「体液が失われて、体に必要な水分と電解質が不足した状態」である。
水分は人体を構成する最大の要素である。
水分が人体を占める割合は次の通りである。
●胎児
体重の約90パーセント
●新生児
約75パーセント
●子ども
約70パーセント
●成人
約60~65パーセント
●老人
50~55パーセント
また、体内の水分は厳密には細胞内液・細胞外液に分類される。
40%は細胞内液、20%は細胞外液に存在し、さらに細胞外液の15%が間質液に、5%が血液(血漿)に存在する。
◎細胞内液
K+が非常に多く、エネルギー産生やタンパク合成など、代謝反応に影響している。
◎細胞外液
Na+、Ca2+、Cl-が多く、循環血液量を維持し、栄養素や酸素を細胞へ運搬し、老廃物や炭酸ガスを細胞外に運び出す。
脱水症は
●水分欠乏型脱水
●Na欠乏型脱水
●混合性脱水
に分類される。
◎水分欠乏型脱水
嚥下障害、認知症等で水分摂取が乏しくなることや、高温下の環境にて過剰な発汗をした場合、細胞外液、細胞内液の両方の水分が減少する。
口渇感・尿量減少が顕著である。
◎Na欠乏型脱水
下痢、嘔吐、出血などにより細胞外液が減少する。
また、大量に発汗した場合、汗と共にNaも排出される。
細胞外液のナトリウムなどの電解質が失われ、細胞外の浸透圧が低下し、細胞外液の水分が浸透圧の高い細胞内へ流れる。
血圧低下・めまい・頭痛・吐き気が顕著である。
◎混合性脱水
水分欠乏型脱水とNa欠乏型脱水が混在する症状である。
では、なぜ高齢者に脱水症が生じやすいのだろうか?
高齢者には以下のような特徴があるため脱水症が生じやすい。
●体内の水分量が減っている
●食欲減退による水分の摂取量低下や筋量低下による筋の保水能力の低下が生じる。
●のどの渇きに気づきにくい
●感覚機能の低下により口渇感を感じにくくなる。
特に、認知症の人はその傾向が強い。
認知症が進行すると水分摂取という行為そのものを忘れることもある。
◎糖尿病や頻尿などの疾患
糖尿病の場合、血糖値が上昇すると糖を排出しようと尿がたくさん排出される。
それにより体内の水分量が不足しやすくなる。
また、頻尿症状があると、排尿の回数が増えるため、必要以上に水分を体外に排出する。
◎利尿作用のある薬を服用している
心不全患者は利尿剤を飲んでいることが多く、また、多くの高齢者は血圧を下げるため利尿作用のある降圧薬を服用している。
利用作用のある薬は、尿の排出を促して塩分を体外に出すために体内の水分が過剰に排出されやすい。
以上のようなことから高齢者は、常に脱水症が起こらないように予防・管理することが大切となる。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デイサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。