ADLを低下させる水頭症に要注意

高齢者のリハビリテーションに携わっているとADLが短期間の間に低下する症例を良く経験する。

 このような場合、ADLが低下する原因を特定し、速やかな対応が必要となる。

 その中でも注意したい疾患が「水頭症」である。

 ●水頭症
脳脊髄液(髄液)の循環障害によって、脳脊髄液が過剰に貯留したため拡大した脳室が、頭蓋骨内面に大脳半球を圧迫し、脳の障害を引き起こす一連の病態

 水頭症の症状は

・歩行時に足が上がらない
・小刻み歩行となる
・物忘れ
・無気力
・尿失禁

などが認められる。

 一見すると、パーキンソン病や認知症の症状に似ており、水頭症との鑑別が必要となる。

 脳は頭蓋内で脳脊髄液の中で浮いている状態である。

 これにより脳には衝撃が伝わりにくい構造になっている。

 脳脊髄液は主に脳室にあるが以下のような原因により脳室が拡大する。

・脳脊髄液の通過障害
・吸収障害
・産生過剰

 これらの原因により水頭症が発症するのだが、高齢者の水頭症では緩徐に脳組織を圧迫するため、非常に緩やかに認知障害、歩行障害、尿失禁が出現する。

水頭症の治療として髄液シャント術がある。

 カテーテルを体内に埋め込み、そこから脳脊髄腔内で過剰となった脳脊髄液を排除することで脳への圧迫を解放し、脳循環や脳機能の改善を施す治療法である。


髄液シャント術により歩行の改善は90%、認知症の改善は80%、尿失禁の改善は80%と報告されている。

 髄液シャント術を行えば、かなりの高い確率で状態が良くなることから、歩行障害や認知症が表れている人がいた場合、水頭症の有無の確定診断が重要である。

 歩行障害や認知症には運動療法などが重要だが、水頭症などの原疾患が進行していれば運動療法の効果は得られにくい

 そのため、リハビリ職種は水頭症が疑われる患者がいた場合、速やかに医師の受診を進める必要がある。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デーサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師向けセミナー

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