
食事時にむせる方、誤嚥性肺炎を起こしたことがある方のリハビリテーションを担当することはよくあることである。
しかし、嚥下の評価や治療に苦手意識を持つリハビリ職種は多い。
この記事では、呼吸と嚥下の関係について解説し、呼吸ケアが効果的な嚥下リハビリになることを感じてもらいたい。
人は食塊、水分、唾液を嚥下するときには息を止めている。
これは、嚥下性無呼吸と呼ばれている。
嚥下直前に、吸気を止めて息を止め、嚥下が終了すると、呼気が行われる。
つまり、吸気停止→嚥下→呼気開始の流れで嚥下は行われている。
これは、嚥下後に咽頭に残った水分や食べ物などの残渣を呼気の「吐き出し」により、口腔に移動させることで、誤嚥を予防していると言える。
この嚥下と呼吸の関係が何らかの原因で崩れてしまうと誤嚥を引き起こしやすくなる。
呼吸器疾患や加齢により、嚥下性無呼吸が困難になること、あるいは、嚥下性無呼吸の時間が短くなり、その結果、嚥下後に吸気が生じてしまい誤嚥が生じてしまう。
嚥下機能は、舌骨の挙上による喉頭閉鎖が注目されやすいが、たとえ、嚥下反射が正常であっても、呼吸機能に異常をきたせば、誤嚥は生じやすい。
正常な嚥下性無呼吸のためには以下の点に留意する必要がる。
①呼吸機能の低下をきたす風邪などの感染症を予防する
②換気量を増加させるために、円背などの不良姿勢を避けて可能な限り、脊柱の生理的湾曲を保った座位姿勢にする
③食事前に深呼吸を繰り返し肺・胸郭の可動性を高めておく
④呼吸機能が低下している時(咳が出る、痰が出る、呼吸が浅い、呼吸が速い)場合は、無理に食事をせずに、点滴による栄養補給や少量の食事を行う。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デーサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。