介護施設における安全管理の視点

介護施設の現場では医療施設と比べてより日常生活場面での安全管理の視点が必要となる。

日常生活場面の安全管理にはリハビリテーション職種の専門性が非常に重要となることは言うまでもない。

老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム等の施設に入所している高齢者は、加齢により心身機能や認知機能の低下が進む。

特に認知機能の低下によって、自身の身体能力の把握が乏しくなり、転倒や誤嚥を自ら予測することが苦手になってくる。

しかし、転倒や誤嚥を恐れるあまり、過度な安静や小食は廃用症候群を生じさせ、さらなる身体機能や認知機能の低下を招いてしまう。

また、新型コロナウイルスの流行により施設における感染対策への取り組みも一段と重要となった。

安全対策としては次の点がポイントとなる。

・転倒対策のためには適切な環境設定と自立支援の援助

・感染症予防のための基本的な感染対策の徹底

・誤嚥・窒息の予防のための嚥下リハビリ・食形態調整

・褥瘡予防のための車椅子シーティングやポジショニング

・内出血や皮膚剥離予防のための皮膚のケア

上記5つの点はリハビリテーション職種が大きく関与できるものばかりである。

また、もう一つ忘れてはいけない安全管理として従業員の腰痛対策が挙げられる。

なぜならば、腰痛は介護施設職員の退職や労災事故の主因になっているからである。

腰痛対策としては利用者の移乗動作の指導や福祉用具の使用などが挙げられ、対象者の動作レベルや身体機能を把握しているリハビリテーション職種の専門性が最も活かされる分野でもある。

腰痛が介護施設の職員に与える悪影響を考えれば、腰痛予防対策は大変生産性の高い安全管理と言える。

リハビリテーション職種の専門性は高齢者に対してのみではなく、一緒に働く従業員にも貢献できる素晴らしいものであると認識してほしい。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デーサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

 

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