ボルグスケールについて

循環器疾患領域の運動療法中によく使用される旧Borg Scale(以下、ボルグスケール)(表)について概説する。

ボルグスケールは、自覚的運動強度(rate of perceived exertion:RPE)の代表であり、運動中に感じる自覚的な感覚を主観的に評価できるように開発されたツールである。

特徴としては、数量化されたスケールであり、性別・年齢・生活環境・服薬の有無などに左右されずに使用できることである。

しかし、認知機能障害がある場合や運動初心者、運動に不慣れな者については、この評価を用いる際は注意が必要である(RPEと数値が合致しない場合が多い)。

表のように、ボルグスケールは6~20段階の評価尺度からなる。

7は「非常に楽である」であり運動強度は5%20は「もう限界」であり、運動強度は100%となる。

一般的に、有酸素運動といわれるのは13以下であり、14以上は無酸素運動となる。

11「楽である」~13「ややきつい」は、嫌気性代謝閾値(Anaerobic Threshold:AT)に相当するとされる。

すなわち、循環器疾患を有する患者の至適運動強度であり、運動の効果が最も得られる運動強度である。

また、本スケールを10倍した値は、心拍数に相当するとされる(例:13であれば、心拍数130/分となる)。

このように、ボルグスケールは運動強度や心拍数だけでなく、運動時の酸素摂取量や換気量、乳酸値との間でも高い相関があるとされ、信頼性や妥当性が示されている。

したがって、運動処方において服薬や自律神経障害などの影響で、カルボーネン法などを用いた心拍数での処方が困難な場合においては、本スケールを用いて運動処方することが有効である。

臨床的には、運動中に息切れと下肢症状の両方をボルグスケールにて聴取する。

両者は、同時に並行して変化するわけではなく、通常は心肺機能が低下している場合には息切れ症状が強く出現し、下肢の骨格筋量減少や筋力低下が著明な場合には下肢症状が強く出現する。

加えて、より安全かつ有効な運動処方にするためには、本スケールと合わせて血圧測定やパルスオキシメーターによる経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の測定、トークテストなどの生体反応をモニタリングしながら実施すると良い。

投稿者
井上拓也


・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

 

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