
糖尿病は、インスリン作用不足による高血糖状態が持続する結果、インスリン分泌不足やインスリン抵抗性増大が起こり、様々な症状が現れる疾患である。
すなわち、一般的には生活習慣病に含まれる内科疾患(代謝疾患)であることが知られている。特に、高血糖が持続することでみられる糖尿病の三大合併症として有名なのが、
●糖尿病神経障害(Diabetic polyneuropathy:DPN)
●糖尿病網膜症
●糖尿病腎症
である。
また、これらに加え下肢動脈疾患(Lower extremity arterial disease:LEAD)や脳血管障害、虚血性心疾患といった合併症も生じる。
しかし、近年は糖尿病を運動器疾患として捉える考え方がある。
つまり、糖尿病患者は筋力低下や骨格筋量が減少し、足関節や足趾の関節可動域(以下、ROM)制限もほぼ必発する。
また、足部の変形(ハンマートゥ、クロウトゥ、外反母趾、凹足変形など)も高頻度でみられる。
このようにDPNや筋力低下、ROM制限が相まって、バランス機能や歩行能力の低下も現れるようになる。
糖尿病の三大合併症のうち、最も臨床的に認められるのがDPNである。
DPNでは、運動神経や感覚神経、自律神経に障害が起こる。
このうち運動神経に障害が起こることで、主に下肢筋に軽度~中等度の筋力低下が生じる。
この筋力低下は、中枢よりも末梢でより強くみられることから、大腿よりも下腿、下腿よりも足部で筋力低下が起こる。
したがって、虫様筋や骨間筋などの筋力低下とその他の足部の内在筋の機能障害が起こり、変形(ハンマートゥ、クロウトゥ、外反母趾、凹足変形など)を来してくる。
また、足関節や足趾(特に母趾)のROM制限は、専ら背屈制限が起こることが知られている。
そのメカニズムは明確になってはいないが、過剰な終末糖化産物(advanced glycation end products:AGEs)の蓄積により、関節組織のコラーゲン線維の架橋形成を増加させ、関節の構造と機能を変化させる結果、ROM制限が起こるとされる。
このような下肢の筋力低下や足部変形、足関節・足部のROM制限は、歩行時の足底圧上昇を招く。
局所的に集中して繰り返される足底圧上昇は、胼胝や潰瘍といった糖尿病足病変を発症させる原因となる。ここにLEADや感染を伴うと壊疽を来し、やがては切断に至る可能性がある。
投稿者
井上拓也
・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
・サルコペニア・フレイル指導士
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。