
今回は、肺炎予防のための咳嗽の知識について述べていく。
・咳嗽とは
咳嗽とは、気道内の異物や粘液・分泌物などを除去するために起こる生理的防御反射の一つであり、気道内の空気が爆発的に駆出されることを指す。
誤嚥性肺炎の原因は様々であるが、咳嗽機能が低下して気道内の異物や、粘液・分泌物をスムーズに除去できなければ、誤嚥性肺炎のリスクは高まってしまう。
・咳嗽のメカニズム
咳嗽のメカニズムは以下の4つの相に分けることができる。
刺激相、吸気相、圧縮相(声門を閉じた状態の呼気努力)、排出相または呼気相(声門を開放して強い呼気へ移行)という4相から構成される。
食事中に咳嗽が誘発されるということは上手く飲み込みの活動が機能しなかった、または機能できなかったことで誤って気道方向に異物が混入(喉頭流入)してしまったことが考えられる。
ここで、咳嗽が多い対象者の姿勢とはどのような姿勢で多いかを想像してみてほしい。
イメージした姿勢は以下の3つの姿勢でどれに当てはまるだろうか?
ほとんどの方が①または③をイメージしたのではないかと思う。
姿勢と嚥下の関係性を体感したい方は一度上記のような姿勢で水分を飲むと理解しやすい。
健常者でも①または③のような姿勢で飲水を行うと咳嗽が誘発されることがあり、いかに姿勢が嚥下に及ぼす影響が大きいことが想像できる。
また、私たちが担当する対象者は高齢者が多く、姿勢保持機能や嚥下機能が若年者に比べると低下してしまいやすいためより注意が必要となる。
・では咳嗽とはどのように誘発されるのか?
咳嗽が生じるということは何らかの異物や粘液・分泌液が気道内の迷走神経終末枝を刺激したことになる。
これらの情報は延髄の孤束核や大脳皮質に情報が送られ、中枢パターン発生器を介して下喉頭神経や、横隔神経、肋間神経を経て声帯・肋間筋・横隔膜への収縮を誘発するという流れになる。
この一連の流れの中で刺激、吸気、圧縮、呼気が行われる。
この流れの中で、特に着目したいのが、吸気と呼気時の胸郭運動である。
上記のように吸気の際には胸郭は上方に上がり、呼気の際には下方に下がる。
胸郭は胸骨、肋骨、胸椎からなる構造物であるため、胸椎と肋骨からなる肋椎関節や胸椎関節からなる椎間関節の動きが重要となってくる。
最後に、特に高齢者の姿勢で多い③の姿勢で実際に考えていきたいと思う。
③のような姿勢を呈した対象者は胸椎が屈曲し、肋骨は前方に回旋する。
このような姿勢が固定化されると咳嗽で必要な吸気の動き、(胸椎の伸展と肋骨の後方回旋)が制限される。
そのため、十分な吸気量の担保ができず、咳嗽力が弱くなってしまう。
万が一免疫力や他の機能も低下している場合、誤嚥性肺炎に至ってしまう可能性がある。
今回は咳嗽の基礎的な知識について述べた。
実際のアプローチなどについても今後記事にしたいと思う。
皆様の臨床の一助になれば幸いである
投稿者
堀田一希
・理学療法士
理学療法士免許取得後、通所介護にて利用者支援を行っています。
臨床では多くの患者さんの主訴が"痛み"であり、痛みを改善するために理学療法士としての基礎である解剖学・生理学・運動学を中心に評価・治療を行なっています。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。