低栄養やそのようなリスクのある患者に対して、栄養学的な視点からその患者に関わることができているであろうか。
端的にいうと、どこまで患者の栄養に気を付けて介入ができているかということである。
運動療法や徒手療法で、どのように優れた知識や技術を持っていたとしても、栄養管理ができていないと患者のADLや予後は良くならない。
特に、高齢者で多疾患併存(multimorbidity)の患者やフレイル、サルコペニアを合併している患者ではそうである。
栄養管理がきちんとできていると、①患者の栄養状態が改善する、②低栄養に伴う合併症が改善する、③身体機能やADL・予後が改善する、④感染症合併症が減少する、⑤併存疾患の治療コントロールが良好になる、⑥感染性合併症が減少する、⑦入院期間が短縮できる、⑧自宅退院率が上昇するなどの効果がある。
栄養管理を実践するためには、まず栄養スクリーニングにより低栄養患者を抽出することから始まる。
栄養スクリーニングの評価方法としては、MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)、SGA(Subjective Global Assessment)、MUST(Malnutrition Universal Screening Tool)、NRS2002(Nutritional Risk Screening 2002)、CONUT(Controlling Nutritional Status)、GNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)などがある。
詳細は成書を参照していただきたいが、これらスクリーニングツールにはそれぞれ一長一短があるので、対象とする患者に応じたものを使用すると良い。
低栄養患者および低栄養リスク患者の抽出ができれば、低栄養の国際基準であるGLIM(Global Leadership Initiative Malnutrition)基準(2018年発表)(表1)にて、低栄養診断を実施する。
まず、スクリーニング(MNA-SF、MUST、NRS2002など)によるリスク判定の後、現症と病因項目を吟味し低栄養を評価する。
現症の3項目(体重減少、BMI(body mass index)、骨格筋減少)のうち1項目以上該当し、かつ病因の2項目(食事摂取不足または疾患による消化吸収不良、疾患や炎症の影響)のうち1項目以上該当する場合に低栄養となる。
そして、GLIM基準にて低栄養となった場合には栄養アプローチが必要となり、特に多職種介入によるチームアプローチが重要となる。
栄養アプローチは、低栄養の患者に栄養を与えて終わりではない。
その後、どのように栄養学的に変化したのかをモニタリングし、患者の低栄養状態が少しでも改善するよう介入していくことが大切となる。
本稿では、栄養管理の重要性と導入部分について述べさせていただいた。
まずは、患者の栄養について気を配りつつ、スクリーニングおよび評価・診断にて低栄養患者を抽出することから始めてみてはいかがであろうか。
今後も栄養について投稿させていただくので、参考にしていただければ幸いである。
投稿者
井上拓也
・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
・サルコペニア・フレイル指導士
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。